A.声楽家は総じて、声量も大きく声域も広いのですが、聞かせる力とはそのまま関係ありません。体ということでの声の能力でいうなら、それらもできないよりはできた方がよいといえます。
ヴォーカルというなら、音域も音量も第一ではありません。きちんと組み合わせて表現に使えるかどうかです。使えるためには、自分の中に何があるのかを知っていることです。さらに、どう組み合わせれば最良なのかを選べることです。
声楽の人は、声以外に神経がいっていないうちは、本当は歌えていないのです。最初は高い声や大きな声を目指すので、一時、仕方ないです。そういう時期はあってもよいです。しかし、それはプロセスであって、最終的な目的ではありません。
最初はいいものをたくさん入れていくこと、それが組み合わさってくる、そこにその人の中で確信が出てこないといけません。一、二音をやるだけでも、四年くらいはかかります。