A.演出家や映画監督、出演者といったプレーヤーは、表現の専門家です。その舞台裏がのぞけるのは私の役得です。
優れたプレーヤーほど現実の社会の一般に人の声も問題について、学びにくいともいえます。プロとしてプロに接している人たちは、なかなか社会の問題に触れる機会がありません。私のこところは、声楽家をトレーナーのメインにしていますが、彼らはここで初めて現実のレベルでの声の問題につきあたります。音大では音楽的、声楽的にすぐれている人はいても、一般社会で困るような声の劣等生はいません。学校に入れません。健康な人もそうでない人も、伸びる人もそうでない人も、今もたくさんの人から、私は学ばさせてもらいました。そういう面では私の方が多くを知り、体験しているわけです。
そして、役者、声優、お笑い、邦楽、エスニックなどについても、それぞれ専門家ゆえに声の問題には疎く、ここに研究にいらっしゃることになるのです。それでも5年、10年はひよっこというような世界の方にいらしていただけるのは」、この研究所ならではの、ありがたいことだと思っています。
そして、ここでは、いろんな分野の専門家といわれる人たちのアドバイス(考え、意見)、判断(診断や治療)も含め、共に検証していくようにしてきたのです。毎年400名以上を声や表現でみてきた私とのコラボレーションの実践ということです。
あくまで専門家や私でなく、その本人を中心にして、どのようにみていくのか、どのようにしていくのか、それをどう支えるのかが問われているのです。そこでは知識や理屈よりも思想と実践が重要です。
しかし、どうも今の日本はどんどん頭で考える理論や客観的な知識の方に寄っていって本質を見失っている感を否めません。それゆえ、社会や時代の問題とあわせて、ここで切り込まざるをえないのです。(Ei)