発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.トレーナーの前で緊張したり、あがったりするのですが。

Q.トレーナーの前で緊張したり、あがったりするのですが。

A.そうしているうちは、初めて見る楽譜や曲を渡されても、ふだんカラオケで得意な歌で出しているような声さえも出ないものでしょう。それは、かなりよくない状態の声です。もちろん、カラオケの声が必ずしもよいわけではありません。しかし、その中には、よい声もたくさんあるのです。なぜなら、声のよく出る状態の声を満たしているところがあるからです。少なくとも、その声は慣れない「ド」などというスケール練習で使う声よりも、魅力的なはずです。そこから自分でよい声を引き出すことができる人も、わずかながらいます。(ちなみにレッスンは、環境や教材に慣れていないために、すでに持っている声よりも悪い状況から始まりがちです。それはもったいないことですから、自分のせりふや歌の録音などでもっとよい声があれば、トレーナーに聞いてもらいましょう)

 

Q.何ヶ月か通っているうちに、うまく声が出るのはなぜですか。

A.きっとトレーナーとも打ち解けてきて、安定した声が出るようになってきたからです。これはあなたが元々持っている声の中の、ベターな声と比べると、決して高いレベルのものではありません。ここで一喜一憂しても、何ともなりません。しかも、そこで安定させてしまうことは、一歩上からみると、くせ声となってしまうことがほとんどなのです。促成栽培のように、すぐの効果をうたうトレーニングは、この声が目標になっていることが多いのです。それは、余計なクセをつけ、次のステップを妨げることもあります。

Q.日本では、相談相手は、声に詳しくないプロデューサーやメンバー(仲間)ではないですか。

A.はい。よく身近な人をトレーナーにするという、お寒い限りの状況です。どこでうまくいっていないのか、そういうときにどのようにするのか、その状況を打破できるのかが、長いスタンスで全く考えられていません。ですから、自分自身でそういうチームをつくることです。そのお手伝いを私の研究所では行なっています。

Q. “すぐに高い声が出る、大きな声が出る”というようなことを宣伝しているトレーニングは間違っていますか。

A.そういうところから、何人もの生徒がそうはならなかった、たまに高く出ても身につかなかった、危なっかしく届くだけと知ると、私の研究所にいらっしゃいます。トレーナーのやり方に合った人しか残れないところでは、こういう問題の生じていることさえ、本人も、トレーナー自身も気づいていないのです。そのトレーナーと合う人だけが、そこでのレッスンをうまく活用できていればよいともいえますし、目指すレベルがそこそこというのでしたら、それで充分ともいえるからです。

Q.マニュアルやコツから入る方法はよいのですか。

A.それはきっかけにすぎません。付け焼き刃の発声法や、ヴィブラートなどに頼った声、悪いくせがついてしまった声などは、カラオケ中級者止まりです。真の表現をするためには、そのままでは不自由極まりないと知るべきなのです。

 

Q.声の種類を区分けして、それぞれをマスターしていくようなことは教えないのですか。

A.そういう複雑なことは、少なくとも最初にやるべきことではありません。(私は、後にも全く必要ないと思っています)事実、そういう人やトレーナーの声の多くは、リヴァーヴ(エコーなどの残響付加処理)をかけなくては、まともに聞けません。それゆえ、そういう手段をとるのでしょう。今の日本の作品の中では、残念ながら充分に使えてしまうのですが、基本トレーニングとして行なうこととは思えません。

聴く側は、声の高さや大きさなどを求めていません。テクニックがこれみよがしに見えることも期待していません。技術がないのも困るのですが)声が伝えてくるものが、聴き手の心を動かすかどうかなのです。目先の成果にこだわる相手にトレーナーが応じてしまうところに、日本人の声がうまく育たない一因があります。ほとんどのトレーナーがそういう根本的なことに気づいていないのです。

Q.トレーナーに必要なキャリアとは。

A.私は、自省もこめてですが、トレーナーには、見えない過ちを防ぐために、自身の体験や経験だけに頼らず、10年間ほどは、毎年100名以上の生徒を、最低5年くらいは他のトレーナーとともにみて、検証した後に、独自の指導をすることを推奨したいと思います。(♭)