A. よくご質問を受けますが、結果としてはどちらでもよいと思いますが、私はゆっくりのフレーズの時、ここ一番のパワーが必要なときには張り出して支えます。16分音符が羅列されているメリスマなどのテンポが速いときや、スタッカートの時には凹ませていると思います。これは自然に任せて体が勝手に必要に応じて対応しているのだと思います。ただし、凹ませるより、張り出すほうが、筋肉にかかる負荷が強いのと、横隔膜を下に下げることで息の減衰をとどめますので、張り出すようなイメージの方が、声に有利に働くと思います。
ですから、あまり頭で考えずに、お歌いになっている曲のフレーズやテンポによって、身体の動きも変わってくると理解すればよろしいのではないかと思います。
私の経験でお話しすると、以前イタリア系の先生に歌を習っていたときには、お腹は、息を吸って膨らんだら、脇腹はなるべく膨らんだものをキープする。また別のイタリア系の先生は、お腹は張り出したまま歌う、下腹を踏ん張って張り出しておき、さらに横隔膜を押し下げながら歌うといいます。また、ドイツ系の先生は息の減衰と共に下腹はへこませていく、このときに下腹の内側の筋肉を絞めていく、と仰います。
全て、日本で第一線で活躍しておられる歌手達です。
一見違う見解かと思われますが、共通するのは、凹まそうが、膨らまそうが、とにかく身体をつかって歌っていると言うことです。下腹を使うと言う意識は不可欠であると言うことは間違いないようです。もしプロとして歌っていきたいと言うことであれば、どの様なやり方が自分の体の特性をいかし、また欠点をカバーできるかということを、日夜、自分と向き合って見つけていく必要があると思います。その時に、トレーナーの意見を参考にしながら、自分と言う楽器を磨いていっていただければと思います。(♯β)