A.たまに、「イ」は共鳴しやすいという人もいますが、ほとんどの場合、何度も繰り返し訓練して、共鳴しやすくなったことが多く、何の努力も訓練もせずに、響きやすいという人はあまりいないでしょう。
「イ・ウ」が共鳴しにくいということは、それ以外の「ア・オ・エ」は共鳴しやすいということが、前提になっているということが、重要です。「ア・オ・エ」が共鳴しやすければ、その訓練の延長として、「イ・ウ」にも取り組めばよいのですが、トレーニングした憶えがない場合は、まず、「ア・オ・エ」が均等に共鳴するように、訓練しましょう。いちばん響きのよい声に、そろえていくのです。
たとえば、「ア」が共鳴しやすければ、「ア」を出すつもりで「オ」や「エ」を出し、均等になったら、今度は、「オ」を出すつもりで「ウ」を、「エ」を出すつもりで「イ」を出すトレーニングを繰り返すことです。これは、それまでの下積みがものをいうので、割と早くできる人もいれば、なかなか難しく、時間のかかる人もいます。すぐにできるとは限らないので、繰り返しトレーニングしましょう。(♭Ξ)
A.共鳴しにくい理由として、イ、ウは口を開けない母音なので、口内の空間も必要以上に狭くなっていることが考えられます。口を開ける母音ア、エ、オを活用して今までよりも口内を開けてイ、ウを発音してみましょう。
一般的にやりやすい組み合わせは、母音ウにはアーウ、オーウ、母音イにはエーイです。まずはアーと声をのばし口内の空間を保ちながら口を徐々に狭くしてウにもっていきます。(もちろんアと全く同じ空間のままでウは難しいですがなるべく保つように心がけます。)アとウが同じ響きで行うことができたら、アーウ:ドードと音程をつけて練習し、さらにはアーウ:レード、ミードと音程の幅を広げていきます。オ―ウ、エーイもやり方は同じです。
なお、イ、ウに限らず発音すること自体に力んでしまう人にとっては、これだけでは不十分なので、顎や口周りの力みを緩めるトレーニングも並行して行うことが必要です。(♯α)
A.「イ」も「ウ」も、普段日本語を喋っている感覚で歌おうとすると、なかなかうまくいかないことがあります。いつもの感覚で発音しようとしたときに起こっている現象としては、「イ」では、口が横に広がり過ぎていて、なおかつ上下方向に狭い状態になっているのではないかと推測します。この状態では、口の中は狭くなり、上下方向の空間が確保できないので、響かずにつぶされたような声になると思います。また、喉への負担も増します。
「ウ」では、口を突き出したような状態での発音になってしまうと、「イ」なのか「ウ」なのかわからないような発音になってしまい、この状態では、本来の「ウ」の状態とはかけ離れてしまいます。理想とする本来の「ウ」というのは、欧米原語のuの発音であり、限りなくoに近いものがあります。非常に深みのある音色になるはずです。
いずれにせよ、ieaouという5つの母音を発音する際に、口の形状、特に口腔内の空間が変化し過ぎるということが、最もよくないことだと思います。一語一語喋り過ぎないこと、oの口の形状をベースにして、それを動かし過ぎないように、ほかの母音を処理できるようにしていくといいでしょう。(♭Я)
A.イーウは口の中も狭いため、共鳴腔も必然的に狭められてしまい、なかなか難しいところではあります。
ある有名なイタリア人テノール歌手が、自伝で書いていることで大変意義深いなと思ったことがあるのですが、「歌手はすべての母音に”オ”母音の要素を含んでなければならない」ということです。
口蓋が下がっている日本人がよく注意される項目の中に、口の中を大きく開けてなどというのがあると思いますが、イタリア人までも、口の中を丸く保つということが重要と考えられるようです。
これを踏まえて、私がやっている練習は、口蓋を上げる、喉の奥を開く、頭蓋骨の後側に空間を意識する、かぶったキャップを持ち上げるかのようにように少し頭蓋骨後ろ部分を持ち上げるなどです。このような広い空間を頭蓋骨の中に作ったうえで「イ」「ウ」を発声します。母音が浅いからと言って、決して音の響きをつぶしません。丸い響き、後頭部の空間を保ったまま発音するのです。これで明瞭に発音できているのか不安になるかもしませんが、聞いている人からすると、何の支障もなく、明瞭に聞こえるものです。(♯β)
A.「i」も「u」も舌の位置が高い母音です。母音を発声するときに、口唇を横に引っ張ったり(日本語のi)、すぼめたり(u)して形を作りますが、口唇の形の違いだけで母音を作ろうとすると口腔内のスペースが狭くなり発声・共鳴しにくいことがあります。
訓練として行っているのは、口唇の形をあまり変えずに下の位置によって母音を変えていく練習です。もちろん連動して口唇も形も変わりますが、主に舌の位置を頼りに母音を作っていくと響きが統一されてくるのが実感できると思います。
また、「i」「u」は声帯を閉じやすい母音でもあるので、人によっては声が出しやすいという人もいます。逆に「a」「o」などは開いてしまって声になりにくいなど、人それぞれの状態があります。
「i」「u」が共鳴しにくいのであればご自分にとって鳴らしやすい母音から丁寧に注意深く「i」「u」へ移行するという練習も有効だと思います。その際に口唇や舌の動き、どの時点で共鳴がなくなってしまうのかをご自身またはトレーナーとともに研究してみるとよいと思います。
「i」「u」は前だけではなく、後頭部や首の後を意識する母音なので、「後ろの感覚」が苦手なのかもしれません。
苦手な母音を克服する過程は自分のクセに向き合うよいチャンスなので、トレーナー等に相談して実際に声を聴いてもらうのがよいと思います。(♯ё)
A.イ、ウは、欧米人(イタリアなど)と比べますと日本人は浅く、平べったくなりがちです。日本語を話す時、日本語歌唱をするときは、場合によっては浅いイ、ウのままで(結果的にそのようになっても)許容できます。しかし、欧米の言語、歌唱になりますと日本語のような浅いイ、ウは違和感を感じます。詰まる感じがし、共鳴しにくさを感じることがあります。
欧米の言語、歌唱では、どの母音も共通しますが、特にイ、ウは縦に伸びるように響きを作ることを特に意識します。体の中に一本の筒が入っていて、その筒の中に息を流しているイメージです。その意識を持つだけでイ、ウが縦の響きになり、共鳴することを感じると思います。
ちなみにウ母音を発する際によく「オのように発音しなさい」と教えられたことが少なくないですが、一理あると思います。(♭й)
A.イとウは別の問題だと思います。私はイは、あまり口を閉じないようにしています。そして舌の横の部分に歯が当たっていることを確認すると、口の形が安定します。男声の場合は特に問題がないように思います。
ウは、オの共鳴を確認してから「オ―ウーオーウー」と近づけていきます。イタリア語のuはoに近いので、oができてればoの共鳴を逃がさないようにすればOKでしょう。日本語の歌詞の場合は、私はイタリア語のuから逆にどの程度、日本語っぽく(薄く)するかを考えます。
しかし、語頭がウの時は例えば「うつくしい」を「utsu…」とかなりイタリア語っぽく露骨にやってもわざとらしく聞こえません。前の母音と繋がっているときは、前の母音の共鳴を変えないようにします。(「さまよう」など。)また、子音が付いているときはその子音にエネルギーをかけます。(「さすらう」を「sasssu…」など。)しかしいずれにしてもウは難しいので緊張しますね。(♭∴)
A.イとウの母音は口腔内の容積が小さくなるので、アのように開放的に声を出しづらい母音ではありますが、反対に少ないエネルギーで効率よく鳴らすことが可能な母音でもあります。
まず、「イ」の母音の発音方法から見てみましょう。舌の両サイドのみを上の歯に押し付ける。まずはこれだけで「イ」をやってみて下さい。高音に行けば行くほどこの状態のキープは難しくなりますが、苦しくなってもやめないで、さらに強く舌を上に押し付けます。もう無理!という段階に来たら、唇の両端を上げてください。楽になります。
すると、喉だけが開いて、空気の通り道が狭まるのが感じられます。狭い道を抜けていく空気が勝手に「イ」という音を立ててくれます。これがよく共鳴する「イ」の状態です。
次に「ウ」です。前提として日本語の「ウ」は、ヨーロッパの諸言語の「ウ」に比べて浅い位置で発音するので、ここからはヨーロッパの諸言語の「ウ」の話をします。声帯をなるべく下に下げて喉で「ウ」というのがポイントです。つい口先を丸くすることに気を取られて「ウ」と言ってしまいがちですが、口先ではなく、喉で言います。
例えばドイツ語には何種類もの「ウ」がありますが、全部喉の位置は同じで、口先の形だけを区別して発音します。
これができるようになれば、日本語の「ウ」にも応用が可能です。(♯∂)
A.イやウは、口の中が狭くなりがちなので、共鳴しにくいと思われます。ですから、他の母音よりも意識して、口の中を開けると共鳴しやすくなります。しかし、なかなか、他の母音と統一することが難しいです。アイエオウの順で、ロングトーンなどで、確認することが大事です。なるべく、音色が変わらずに、統一されていることが重要です。見た目の口の形も、気をつけてみましょう。口に力が入ってると、共鳴しにくくなります。発音は、口で作るよりも、鼻の奥を意識して発音すると、イやエが、響きやすくなります。口の開け方も、とても重要です。
イは決して、横に開かず、ドイツ語のUウムラウトのイメージがよいと思います。ウもなるべく、見た目、口をあげず、丸い感じをイメージして歌うとよいです。
顔の表情も、気をつけるべき点で、目をしっかりと開き、後頭部を開くようなイメージで歌うと、共鳴しやすくなります。顔や口など、気をつけるべき点は多くありますが、それらは、すべて、支えあってのことです。恥骨から、背中を通って、息が出るのをイメージして、歌うとさらに共鳴してきます。口の開け方は、音の高さにもよりますが、基本は横に開けないこと。高い音になるとそうもいかないかもしれませんが、なるべくたてに、口を開けるようにすると、共鳴すると思います。(♯Ω)
A.母音の中でイとウがもっとも難しいと言われています。皆さんが一番苦労する母音ですし、私も繰り返し練習を積んだ母音です。「イ」と「ウ」は口の中が狭くなります。特に「イ」は口を横に開く、と学校で習います。子供のころによく見た50音の口の形の解説図にも、しっかりと横に開いた図が載っていますね。
確かに「イ」は横に開くのですが、それでは歌うときに喉がしまってしまうし、あごも固まってしまい歌いづらいです。
「イ」の時の舌の位置を鏡で確認してみましょう。舌の両脇が、上の奥歯を軽く押しているのが分かると思います。
舌の奥は喉と一緒に上に上がってこないように、初めは意識的に力を入れて下に下げるようにすると口の中が広くなります。もっと分かりやすく言うと、「イ」の母音の時でも軟口蓋は常に高く、そして舌の先は下の歯の裏に軽くついている状態を保ちます。これで「イ」の発声が出来るよう繰り返し練習します。
「ウ」の場合も同じです。唇を丸くし、口の奥は「オ」の状態で広く、高く保ちます。音の高低に伴って、喉(声帯)が一緒に動いてしまわないようしっかりとお腹で支えます。息のラインは「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」すべて同じ場所を通るのです。響きは頬骨の辺りや鼻筋のところにあたるよう意識します。
覚えるまで時間がかかると思いますが、正しいラインで声が出せればとても楽ですので、がんばって練習しましょう。(♯Å)