A.落語本来のテンポやリズムというものがあるのですが、あまりその部分を追求していく必要はありません。セリフの練習として扱っていきましょう。
また何人かの役を演じ分けなくてはならないのですが、声のトーンを変えたり、キャラを作ったりするのではなく、役の気持ちを考えていくことに集中していきましょう。登場人物が二人であれば、その二人の気持ちを絡めていくこと。一人二役を声優のように演じるのではなく、自分の中の二人、二人の気持ちの方向性を合わせていくようにしましょう。
実際、落語ではなく朗読をする際に、セリフ部分があると思いますが、それを一役者として読んだほうがいいのか、ナレーションの延長で読んだほうがいいのかと、考えてしまうと思うのですが、何人かで役を振り分けて、ラジオドラマのように読んでいくのであれば、普通のセリフとして読んでいって構いませんが、ひとりでナレーションからセリフまで読むのであれば、工夫が必要です。その場合に、この落語の教材を練習しておくと役立つのではないでしょうか。
「おいはぎびっくり」の、特に最初の6行までは、次から次へとセリフをかぶせていく練習になります。全編を読む練習をしつつも、この冒頭部分を繰り返し練習することもお勧めします。
セリフをかぶせていく時に、旦那・・・「焦っている。早く行きたい」 籠や・・・「行きたくない」この気持ちの違いを見せていくことが大事です。この気持ちの違いが、役の違いとなって際立ってくるのです。またこの違いを、しゃべりのスピードの違いで表していってもいいかと思います。
「セリフをかぶせていく」という意味ですが、例えば、もしこの落語を二人で演じているとしたら、相手がしゃべっている途中から、自分のセリフをしゃべりだしていく(セリフをかぶせていく)・しゃべる準備をしていくのではないでしょうか。落語では、ひとりで演じているので実際は不可能なのですが、その位の気持ちでセリフを先取りして、かぶせていくことが大事なのです。
また最近では落語家本人が書いた書籍が多数発行されています。芸論や話芸論・落語論と勉強になることがたくさん書かれています。ぜひ何冊か読んでみることをお勧めします。