A. レッスンの最初に、「ア」でスケールを聞いて、それが声の判断材料になります。同じように、ことばは、「ア」でロングトーンを聞いています。
音高は、それぞれに合わせて、中・低・高音を決めています。毎回、同じ音高をロングトーンで聞いているので、歌のスケール同様、上達具合や風邪など異常、声の疲労度など、レッスンを進めるための、チェックポイントになります。
スケールではとても貧弱な声しか出せないのに、歌い慣れた曲になると、なかなか立派な声が出る場合もあります。ことばでも、ロングトーンでは、充実した声がどの音域でも出せないのに、読み物の朗読では、立派な声という場合も、あります。
通常、スケールやロングトーンで、あまり充実した声が出せなければ、歌や朗読でも、それほど充実した声を出せないものですが、ときどき例外もあることを忘れないようにしています。([E:#x266D]Ξ)
A. 一声でいいと思うのですが、発声の基礎という意味ではロングトーンが一番見分けがつきやすいです。声が揺れていないか、逆に突っ張って聞こえないか、音程が定まっているか、ビブラートがかかるか、そのビブラートが音程の上についているかなどロングトーン一声で発声の基礎的要素は、ほぼ判断がつきます。
ロングトーンがうまくいかない人が高音の訓練をいくらやっても、基礎のない建物を高くしていくのと同じです。いつか崩壊します。
声の基礎力、声のベーシックな力をつけたいなら、低音域から中音域をしっかりと訓練するべきです。特に低音、中音で支えがしっかりとできないまま、高音の勉強を始めるとかえって悪い癖がついて遠回りです。
ロングトーンができない人は、スタッカートで単音を歌ってもらって判断します。瞬間的な声のアタックがうまくいくかどうかも重要な要素です。体、ブレス、声帯が閉じているかなどの判断になります。ここで息漏れなどがあれば、まずそこから訓練していくことになります。息漏れがおきていると充実したロングトーンは難しいです。([E:#x266D]Σ)
A. 始めに、簡単な音型・発音で発声してもらい、その人の歌い方で声を聴き、大まかな傾向をみます。
・息が流れていない声
・息漏れのような声
・鼻にかかる声
・声が割れる、掠れる、雑音が混ざる声
次に、それぞれの傾向に見合った改善方法を、同じ音型・発音を使って行います。
例えば、息が流れていない声の場合は、息を吐く―発声―息を吐く―発声…を交互に行い、息の流れを促しながら発声していきます。声が小さい、弱い人は息が続きにくく、力んでいる人は安定して息が吐けない、といった部分も調整します。
その後で、発声をしてもらうと、始めよりも声の伸びが良くなります。このビフォーとアフターの変化が大きいほど柔軟性のある声にもっていきやすいです。
いろいろな傾向が混在している場合には、改善方法を組み合わせチェックします。([E:#x266F]α)
A. 「喉の開き具合」、「ブレスのコントロール」、「音程」、「音域」、「ボリューム」、「響き」、「音楽づくり」です。その人が持った本来の声が、いかに邪魔されずに出てくるか、という部分を大事にしています。
例えば、声を大きく出したいと言っても、叫び声になっているだけでは成長したとは言えません。音域を広くしたいといったところで、高音域を苦しそうに無理やり出していることが、音域の拡大ということにつながるとは思えません。
いかにして、その人の持っている声を効率よく扱うことができているか、聞いている人が、無理のないように、それでいて拡張された状態として評価される状態であるか、という部分が重要であると思います。
自分自身がやっていて無理と感じるのと、聞いている人が無理と感じるのとでは、いくらか乖離しているものがあると思います。自分の中での「無理」は、限界を突破するのに必要な課題であることが多いと思いますが、聞いている側の「無理」は、かなり無理して出しているように聞こえるという状態だと思います。客観的に聴いた状態で「無理」のない状態にしていくということが、評価の目安と思います。([E:#x266D]Я)
A. 体に無駄な力みがないかということに着目しています。喉で押して声を出していたり、首の周りを固めていたり、なくて七癖といいますが、人はいろいろな力みの癖を抱えているので、それを脱力できているかをチェックします。
力みが取れてきたら、息が流れているかということに着目します。いい声が出ていてもそれが息が流れているかいないかが、今後の歌の伸びを決定づけるため、非常に重要になります。声をコントロールする唯一の要素は息であるといっても過言ではないでしょう。
次に声の支えができているかをチェックします。おなかの支えができているか、喉で声を支えていないかということを見ています。
そして最終的に(脱力にもつながることなのですが)体を統合して使えているかということをチェックします。声を出すということは体全体が楽器です。喉だけで頑張る、おなかだけで頑張るというのではなく、それをさらに下半身で支えられているか、上半身は固まっていないかなど、全身で声を出すことができているかを見ます。
ここまでのことはあくまで発声の話で、さらに、発音、音程、ロングトーン、スタッカートなどの歌唱技術の面をチェックし、最終的にその本人が表現して歌えているか、プロの方やプロを目指す人には、そのパフォーマンスが商品になるか、お金をとれるレベル、お客様を感動させることができるかなどを見ています。([E:#x266F]β)
A. 歌に対する姿勢、身体や精神の状態など、総合的に「伸び」や「成長」をみるようにしています。
声は表現の手段であって目的ではないので、声を出すことだけを目的に考えているうちは、声そのものに執着しすぎて何も生み出さないと感じています。
本人の伸びを感じる時は、素直にまっすぐ音楽と向き合って歌っているのが伝わってくるとき、演奏する楽曲にふさわしい音色がするとき、です。
トレーナーに言われる「声がかたい」「力が入っている」「平べったい」等の抽象的な感覚を過剰に気にして、それしか考えられなくなっている人をみます。
(トレーナーは、このようなあいまいな言葉を使うべきではないと思います。生徒はどこかしら固かったり力が入っていることはわかっているからレッスンに来るので、それを指摘するのではなく、どうしたらよいかを伝えて実行するのがトレーナーの仕事だと思います。)
「私は力が入っているので…」とか「声が固いって言われていて…」と自分が発した声が「よい」のか「悪い」のかしか考えられないと、テンポが不安定になったり、ディクションに気を配れなかったりします。
そういうことから解放されて音楽そのものを表現すること、言いかえると「自分(の声)」ではなくて「音楽」のほうへ細やかな注意が向けられてくるようになると、すごく伸びたなぁと感じます。([E:#x266F]ё)
A. まず「声の伸び」の「伸び」という意味につきまして二通り考えることができます。
1つは「成長」と意味の伸びです。「成績が伸びたね」「あの人声よくなったね、声伸びたね」という会話をよく聞くと思います。
もう1つは声が長く伸びる、フレーズを長く伸び伸びと歌うことができる、所謂ロングトーンの意味合いを込めた「伸び」です。
どちらで捉えてよいかは、質問の言葉が抽象的なために判りづらいですが、声の「伸び」をチェックする方法としまして、古い時代(1800年代以前)のシンプルな曲目を歌わせます。イタリア古典歌曲などです。シンプルな曲程テクニック面などの粗が見えやすいからです。コンコーネなどの母音のみで歌う教則本もおすすめです。息を効率良く使ってフレーズを歌う訓練になるからです。
([E:#x266D]й)
A. 基本的なことが当たり前にできているのかのチェックをします。発声練習の時に肩が上下しないかです。肩が上下するということは呼吸が浅いということです。そういう人にはメニュとして「息を長く力まずに吐く」ということをやってもらいます。息を吐いてしまうと、吸おうとしないでも力まず自然に息が入ってくるということを理解してもらいます。
次にお腹が使えているかです。発声をするときにお腹をへこましていくか膨らましていくかは、国や先生によって違うのでしょうが、お腹が動くことは共通です。生徒たちが思っているよりもはるかにたくさん、声を出すときにはお腹が動く、ということを、納得してもらいます。
理想的な発声とは、肉体的には「顎や肩の力を抜く、腹を使う」というシンプルなことなのでしょう。それが本当にいい声なのかどうかはトレーナーが自分の耳を信頼して判断していくしかないように思います。([E:#x266D]∴)
A. 音域が広がったか~身体や喉を固くして声を出していた人なら、力みさえとれれば割と簡単に音域は広がる。
中音域の不安定さが解消されたか~正しい呼吸が身に付き、喉頭が常に下がった状態でないと安定しないので、この山を越えるのが一番の難関。一朝一夕にはいかない人がほとんどなので、焦らない。
一度のレッスンで、多くて3つ程度のアドバイスに留めます。次回レッスンで復習、そして視点を少しずつずらしていく。
横隔膜のコントロール方法、表情筋の使い方、正しい姿勢、息の吸い方、吐く瞬間、吐いた後の持続など。
アドバイスが一周した時に、問題点が少しでもクリアしていたら正解です。螺旋状に上達していくのを待ちます。
メッサディヴォーチェ(ピアニシモからクレシェンドして、またデクレシェンドしていくロングトーン)ができるか~中音域の問題が減った人なら、出した声がコントロールできる状態を目指します。メッサディヴォーチェは完全なコントロールが必要な上、成果が本人も自覚しやすいでしょう。
倍音が増えたか~これはトレーナーの耳頼りです。とかく声を出す側は骨伝導音を聞いてしまうので、実際に出ている声がいいのかイマイチなのかを、聞く側が逐一フィードバックしてギャップを埋める必要があります。
歌い手が自分で判断できる状態になれば、かなり伸びていると言えます。([E:#x266F]∂)