発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. コンコーネ50の6番の歌い方について教えてください。

.冒頭にAndante sostenutoと指示があるように、ゆっくり目に歌う練習曲です。1小節が狭く窮屈に書かれていますが、見た目に惑わされて、速くならないように、気をつけましょう。最初の4小節で、1オクターブ上行するので、チェンジをどうするかが、声種によって変わってきます。クラシックを目指していない人は、途中でチェンジして、歌いやすい声で取り組みましょう。最初のフレーズから、2小節以上のロングトーンが、頻繁に使われています。安定して出せるようにしましょう。上級の人は、<>もつけて練習してみましょう。35小節目からの、少しずつクレッシェンドしていく部分は、初歩の人も、しっかり取り組みましょう。

曲全体を通して、ほとんどスラーはないので、スラー以外の部分では、レガートにならないように、気をつけましょう。曲の途中、二重線の前の、41小節目からのスラーは、しっかりレガートで歌いましょう。二重線からの後半は、Majeurになるので、明るく伸び伸びと声を出しましょう。4小節続くロングトーン2回出てきます。気持ちを込めて、ダイナミックにも歌えるように練習してみましょう。([E:#x266D]Ξ)

 

.これまでの課題よりも音の持続力、跳躍が大変な課題です。常にレガートを意識してください。冒頭のsempre sotto voceは、「常に(いつも)柔らかく歌う」といったような意味です。ですから跳躍の音を張り上げたり力んではいけません。

3小節のブレスは柔らかく吸いましょう。このブレスを強く吸いすぎると体が固くなり次の跳躍が大変になります。同様に7小節のブレスも気をつけましょう。以下のブレスも同様です。

14小節の#ソの音は、この調性で特に大事な音なので大事に歌いましょう。音程が下がってしまうことが多いです。

27小節のミ~[E:#x266D]シへの跳躍は減5度という難しい音程なので確実にとれるようにしてください。

35小節からcresc poco a poco「次第に大きくなる」と記してあるので40小節のレの音が一番盛り上がるよう膨らませていってください。

41~44小節までは短調の曲の終りなのでフェルマータに向かって多少rit(ゆっくり)してもかまいません。

45小節からは伴奏も長調になり曲全体が明るくなるので、短調よりも明るく歌おうと思ってください。47小節#ド、初めて長調の音が出てくるので大事に歌いましょう。([E:#x266D]Σ)

 

.急がずにゆったりとしたテンポで、息が足りなくならないよう、曲全体においてしっかりと息をコントロールすることが求められます。始めの1,2段目にあるラドミの上行形は、デクレッシェンドをしようとして喉が締まっては逆効果です。その場合にはラドミで声が膨らまないよう維持する(音量を一定にする)というつもりで歌うとよいです。

曲全体において、3小節または4小節にわたってひとつの音をのばす箇所がたくさんあります。クレッシェンド・デクレッシェンドはもちろんですが、声をのばしながら伴奏の和音の変化を聴く練習としても最適です。特に3段目の3小節で短調から長調へ転調し、5段目の5小節でまた短調へ戻る箇所は、同じ音を歌う中で音色の違いを感じてみましょう。また、5段目の6小節からあるcresc. poco a poco- - -f は、少しずつクレッシェンドして、その後明確に強弱記号がある通り、しっかりと「f(フォルテ)」にもっていくことで、曲にメリハリがつきます。([E:#x266F]α)

 

.楽譜を見ると、音を伸ばしている部分と、跳躍している部分の2パターンが比較的目立つと思います。「Andante sostenut」は、「歩くような速さで、音を保って」となるので、伸ばしているところも跳躍しているところも、客観的な聞こえ方のところで差がないように、音がスカスカにならない状態で演奏できるとよいのではないでしょうか。その際、声は力み過ぎないように気をつけたいところです。

音を伸ばしている部分では、クレッシェンドとデクレッシェンドが目立ちます。このクレッシェンドとデクレッシェンドは積極的に活用しましょう。単純に音量の問題としてとらえるのではなく、しっかり体でコントロールされた状態で強弱が表現できると理想だと思います。音が上行系で跳躍している部分にデクレッシェンドが書かれています。こちらは体のコントロールを、より一層必要とされる部分になります。

長調への転調の前には、唯一のフォルテが書かれていますが、その前は少しずつクレシェンドをかけるように指示があります。この部分も派手に大きくするのではなく、緻密にコントロールできるとよいですね。このように、音だけを見れば難しいことがなさそうに思える曲ですが、楽譜に書かれていることを忠実に守ると難易度の高い、練習課題としてはとても役立つものになると思います。([E:#x266D]Я)

 

.andante(歩く速さで)のテンポ指定ですが、11拍踏みしめるように拍を感じるよりも、3拍子を一つとしてとらえて音楽のまとまりを感じながら歌うと歌いやすいでしょう。構成としては右のページに「Majeur」とありますように、前半の左ページから右ぺージの一段目までが短調で後半が長調です。前半3段目からはFdurになり長調の要素を見せますがすぐ短調に戻ります。次のページの長調との関係は、同主調といわれるもので、いわゆる主音が同じ短調長調の関係です。どちらもラを主音とする長音階短音階で構成されているのです。長調に入ってからは、音楽をより幅広くおおらかにとらえるとその変化がついていいでしょう。

楽譜に常にクレッシェンド、デクレッシェンドが記載されていますが、音楽が常に動いているという意識を持つのに役に立つと思います。デクレッシェンドは自分の中に音を引き入れて小さくするのではなく、むしろ、自分の外に音を絞っていくようにイメージすると歌いやすいと思います。([E:#x266F]β)

 

.前半は短調です。この曲集で初めて短調の歌いだしとなります。短調を悲しく聞かせるためには第三音(中声用では「ド」)を気持ち低めに歌うことです。基本的には静かな声で囁くように歌います。そのためにはしっかりしたお腹での支えがなければなりません。技術的には初めの4小節間にすべての難しさがあります。上行し続ける音形でも、コンコーネ1番は順次進行(音階の順に音が並ぶこと)であるのに対して、ここでは跳躍進行であり、難しさが増します。

まずは復習として順次進行で(間に旋律短音階の音を入れて)歌ってみてください。これだけでも、初めて短調の音階を歌う練習をすることになるため、得るものが大きいと思います。

次に、楽譜通りの音を歌うのですが、音と音の間をグリッサンドで埋めてみてください。ゆっくりとグリッサンドでつなぎます。グリッサンドの練習をしてもらうと、多くの人は動きが速すぎます。まず初めの音を十分響かせて、共鳴の位置を感じてからゆっくり動かし始めます。半音でさえ遠く感じるほどゆっくり。スポーツでもそうですが、ゆっくりやることで筋肉や、普段は意識できない不随意筋を意識していくのです。なお、これらの練習をするときにはsotto voceに拘らずメゾフォルテくらいの自然な音量で練習しましょう。([E:#x266D]∴)

 

.初めて短調の曲が登場しました。短調だからといって声の出し方を暗くする必要はないですが、伴奏をよく聴いて、仄暗い和声を味わいながら歌えば十分です。曲の後半は長調です。これもことさら声を明るく変えようとは考えず、雲が晴れるような和音の変化に耳を傾ける余裕さえ持っていれば大丈夫です。

技術的には、34小節のデクレシェンド&上行が難しいと思います。ブレスのときに考えるのは次の音ではなく、フレーズの最高音です。そうすれば無理なく体の準備が可能になります。

伴奏は何かを掻き立てるような音型のため、ともすれば興奮して声の制御が効かなくなりがちです。しかしこの曲で最も重要なのは、落ち着いてメッサ・ディ・ヴォーチェ(ロングトーンを小さく始めて大きくし、また小さくしていく)を聴かせることです。恐れずに息を前に進めつつ、横隔膜でしっかり支えながら歌います。そしてクレッシェンドはぎりぎりまで我慢し、デクレシェンドには早めにとりかかるのが、立体的に聴かせるコツです。([E:#x266F]∂)