A. 結論からいうと、どちらも大きく間違ってはいません。低音寄りの、深く大きな声が好きで、そのような声を出せるようになりたい人は、胸も軟口蓋も意識して声を出していると、少しずつ太く立派な声になっていきます。
ただ、ずっとそれだけをトレーニングしていると、やがては体にこもった声になってしまうので、他の出し方も、トレーニングしていく必要があります。
例えば、眉間に響かせるようにして、声を出すことです。これも、眉間の内側に響かせるようにがんばってしまうと、鼻腔にこもった声になってしまう原因になるので、気をつけなければいけません。
あくまでも、眉間の外側に、響かせるように、意識していきましょう。眉間がどうしても好きになれない場合は、胸でよいので、必ず胸から外側に、声を出すようにしていきましょう。
他にも何通りか、声を出すトレーニングがあります。どの出し方も、チャレンジして、その結果、どのような声になっていくのか、よく観察して、自分の目指す声を、作り上げていきましょう。大切なのは、声は、体の外に響いていないと、こもった声になってしまうということを忘れないことです。(♭Ξ)
A. 基本的にはあなたがどのような目的でヴォイストレーニングを考えているかによると思うのです。胸の真ん中、軟口蓋、眉間というのも、それぞれにメリット、デメリットがあります。目的と自分の声の現状を客観的にみて考える必要があると思います。
胸の真ん中ということでいえば、ここを響かせることで「自然な声の強化」ということにつながると思います。自然な声というのは話している声の強化です。この響きのままである程度の音域を歌える必要もあります。ここの響きがないと話している声の自然さがなくなるので発音が悪くなります。声楽家の中でも高い声を歌う人の多くは、音域が高くなればなるほど発音が不鮮明になります。これは胸の響きがなくなることも要因の一つです。響きと音域が優先されているからです。それを補うために不自然に子音をたてたりしますが、これもリスクが高いのでよく考えてトレーニングすべきです。
日本の声楽の指導者に多い、歌っているような声、浮いているような声は、イタリアなどではあまり見ません。どのソプラノも大きな胸声で喋っています。日本の声楽指導者の喋っている声は、裏声に近いのです。胸の真ん中の響きというのは地声の強化といってもいいので、より本格的な声を考える場合は、ここの響きのトレーニングは、効果があるトレーニングの一つです。
軟口蓋の問題は、あなたが鼻声を使いたいか使いたくないかです。軟口蓋を高くすることで鼻への通路が遮断されて、声が鼻に行かずうまくいくと更に高い響きを手に入れることができます。軟口蓋が低いと鼻への通路が開いて鼻声になります。
眉間に響かせるというのもヴォイストレーニングでよくいわれますが、これが目の周辺のマスケラ(副鼻腔)を響かせることが目的ならば、まずは軟口蓋を高くして鼻への道を閉じることから考えましょう。
いきなり眉間だけを考えると多くの人がただの鼻声になったり、喉が上がって薄っぺらい声になってしまいます。軟口蓋を高くキープすることができたら勝手に声が眉間周辺に響いてきやすくなります。自分で回すというより勝手に回るようになります。
それぞれのメリット・デメリットを書きましたが、ジャンルや目指す声でトレーニングは変わるので、よく検討してトレーニングしてください。(♭Σ)
A. 練習としては、どちらを意識してもよいです。歌うときにどちらか一方を選ばなくてはいけない、ということもありません。さまざまな練習方法がある中の二つであるというだけです。仮にもし、そのどちらにも意識を向けずに歌ったとしても、胸にも眉間にも声は響いています。(声による振動が起きています。)
では、なぜ意識を向けるのでしょう。
例えば眉間は、頭の骨の内側に前頭洞という空間があり、頭の骨の外側(表情筋)には前頭洞と繋がる筋肉があります。眉間に意識を向けることで「前頭洞に繋がる筋肉を意識させる(働かせる)」ことになるのです。それが結果的に声に影響を与えているというわけです。ちなみに、眉間を意識しながら軟口蓋を意識してみてもよいのです。
声の響きは音の高さによっても感じ方が違います。あまり一部分にだけに拘らずに、ぜひさまざまな方法を実践して自分の感覚を広げていってください。(♯α)
A. 人間の体には、声が共鳴するさまざまな部分があります。しかし、「響き」というのは、狙ったからといって、必ずその部分が響くとは限らず、自分の中ではその部分が響いているように感じたとしても、客観的には別の現象が起こっていることが往々にして考えられます。ですので、狙って響かせるというのは危険なことなのです。
参考までに、声が弱い、鳴りにくいという人は、多少、胸の振動を感じるように出すということで改善される場合がありますが、これにこだわりすぎるというのは、力みすぎたり鳴らしすぎたりという弊害もあるので危険です。
軟口蓋および舌根の高さについては、狭いよりも広い方が声の通り道という観点では有利なので、これについては「空間の維持」という観点で心がけるとよいと思います。ですが、響かせようと思うとバランスを崩す可能性がありますので、あくまでもフォームに徹してください。
最後に眉間の響きですが、この部分は、響きとしては重要なポイントですが、狙ってもその部分が響かせられるわけではなく、却って鼻声になったり、声が浮きやすくなったりという弊害が起こりやすいポイントです。この部分は、日ごろのレッスンやトレーニングの中で意識しているフォームを大事に取り組んだことにより、「結果的に得られる授かりもの」と認識したほうがよいと思います。
響きは大変に重要なポイントですが、「自分から狙わないこと」というのが、とても大事です。(♭Я)
A. 音域と声種(バス、バリトン、テノールなど)にもよると思います。一般的に低い声は胸に響かせ、中くらいの音域は軟口蓋を通して頬骨(マスケラ、といいます)を響かせ、高音域は眉間に響かせると思ってください。ちょうど声の高さに対応して、響かせる場所が半円を描いて少しずつずれながら対応するイメージです。
響きを取り出すには、まずはハミングで練習します。低い声でしっかり目にハミングを出します。はじめはあまり響かせようとはしないでも構いません。そして高さを少しずつ上げたり下げたりしてみます。そうすると唇がブルブルくる場所があると思います。ここが一番わかりやすいので、まずはその場所の響きを味わってみてください。
響きの感覚を少しずつ強くしていくといいでしょう。ここの響きがいつでも取り出せ、そしてある程度ハミングで響くようになったら、その少し上、軟口蓋の響きを同じように獲得します。ここが中音域、マスケラの響きです。
ここが一番わかりやすいのではないかと思いますので、ここで声に取り出す練習をします。「んー」→「まー」と口を開けます。声が頬骨のあたりに集中して、そこから世界に飛び出すイメージですね。
慣れてきたら初めからその音域で「あー」と声を出して、頬骨が響いているか確認します。
ハミングでどこも響きが感じられない、という人がいます。声自体が弱すぎる人にそういう傾向があります。息吐きなどで、ある程度、声が出るようになってから響きのトレーニングを始めましょう。(♭∴)
A. 結論からいうと、全部やっていただきたいです。
そして時と場合(音の高さ、強さ、歌い始めの音なのか、最後に長く伸ばす音なのか、etc…)によって、そのバランスを変えて使います。あるときは胸6:軟口蓋3:眉間1、あるときは胸2:軟口蓋4:眉間4といった具合にです。
私の感覚では、基本的に低い声は胸に、高い声は軟口蓋をより高く上げて、眉間はあまり意識せずに歌っています。これは私の場合、眉間(正確には頭蓋や鼻腔を含めた頭部のあらゆる空洞)に自動的に音が響く状態になっているからです。
このように、3つのうち少なくとも1つは常に自動的にいい状態に入るように、日頃練習しておきましょう。そうすれば本番で意識するのは残り2つでいいわけです。3つ意識するポイントが2つに減れば、マニュアル車とオートマ車ぐらい操縦の難易度が変わってきます。
もちろん、歌っている途中で考えなくてはならないことは、他にも山積みです。だからこそ技術的なポイントは、ほぼオートマティックにクリアできるよう、体に覚えさせておくことが大切です。そうしておけば、本番中は情景を思い浮かべたり、お客さんの反応を見たりする余裕ができて、より一層レベルの高い演奏が可能となります。(♯∂)