発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.アスリートのように身体を鍛えることは、歌に有利でしょうか。

A. 声を出すことや歌うことも身体を使うことなので共通する点はあります。体力や集中力、柔軟な身体をもち、勝負強く、あがらない、リラックスができる、リズム感がよい、基本の繰り返しの大切さを知っている、状況に応じた瞬間的な判断ができる、などです。ひとつのことを自分の身につける過程を訓練として体験してきたということも、有利な条件です。

アスリートには、性格的に明るく、人前に出たがり屋が多く、身体も動かせるのですから、タレント、ヴォーカリストにも少なくありません。楽器ができなくともよいのですから。音楽性、芸術性に関しては、なんともいえません。視野が狭く、一途さが裏目に出る人もいます。

ステージに出ることも発声、歌唱も肉体を使うものですから、身体の訓練は、それなりに行う方がよいのです。ただ、アスリートも種目によって、鍛え方が違うように、アスリートのように鍛えるというのは、大雑把すぎます。必要に応じて、鍛錬しましょう。(♭π)

 

A. 確かにアスリートのような身体を持っていることは、歌には有利になります。実際に、お相撲さんやアスリートで、声のよい、歌のうまい有名人は少なくありません。ただ、スポーツマンなのに、歌もうまいということで、話題になることが多いので、アスリート全体の人口からいえば、驚くほど多くの人が、声がよいというわけではなさそうに思います。なぜなら、トレーニングの過程で、掛け声などで喉を酷使して、声を傷めている人もよく見かけるからです。

私は、芸大に入学してから、ウエイトトレーニングに半年ほど取り組みました。まわりの同級生が、背が高かったり、けっこう太っていたりと、見た目だけでよい声が出そうだったからです。トレーニングの甲斐があって、半年後には体重が15kg近く増えて、胸囲も10cm以上増え、見た目には引けを取らなくなりました。筋トレで体重を増やしたので、身体は動きやすくなりましたが、発声への影響は、劇的には感じませんでした。

数年後、ウエイトトレーニングは、発声にはよくないと、噂を聞きましたが、その内容は、きちんとストレッチをすれば解決する程度の内容でした。

アスリートのように身体を鍛えることが趣味ならば、悪くはありませんが、ストレッチは必ず実施して、柔らかな筋肉を保ちましょう。そうでなければ、歌に必要な部分を中心に(呼吸関連の筋肉や喉まわりの筋肉を)、実際の使い方に合わせて、無理なく育てていくことが、お勧めです。(♭Ξ)

 

A. あなたの歌にとって何がどこまで必要かということで違ってくると思います。例えば、声楽の場合、力むこと、固くなること、固まることは基本的にNGになることが多いです。その意味で腹筋運動をNGとする人もすくなくありません。むしろ広がりや、脱力、バランス、共鳴ということに重点がおかれることが多いです。しかし、長渕剛T.M.RevolutionGACKTなどはアスリートのような身体をしています。筋トレやさまざまなトレーニングで鍛えられた身体でしょう。「歌」という部分だけでなく「観られる仕事」として考えると鍛えられたアスリートのような身体は表現の一種だと思います。

また、そういう人は日本のポップス、ロックの世界ではとても声が充実している人々です。声や歌で勝負できる人々だとも思います。その意味では彼らにとってはその身体を作ることと表現方法というのは密接につながっていて、それは声にも結びついているということなのでしょう。実際に稽古や合わせ、本番、ツアーなどを重ねて仕事にしていくということはとても体力がいることです。その一連の流れをこなしていくための体力づくりという面も上記の人々が鍛えている理由の一つかもしれません。体力づくりというのも歌を仕事としていくためには重要な要素です。(♭Σ)

 

A. 歌い手にとって身体はまさに「楽器」なので、使いやすい(動きやすい)状態に維持するという意味での「身体を鍛える」はよいと思います。ですが「アスリートのように」まで鍛えたからといって、それが直接的に歌に役立つ(効果を感じる)ことはほぼないと思います。言うまでもなく、スポーツをするときと歌うときでは筋肉の使い方が違うからです。

歌においては、スポーツをするときのような筋肉への負荷や瞬発力ではなく、身体全体の連携が取れる「しなやかな動き」が求められるのです。そして、そのような「歌うための身体」は、歌っていく中で身につけていくものなのです。

歌うときには、必ず息のコントロールが必要になります。言い換えると、歌うための身体とは「息がコントロールできる身体」とも言えます。そのように考えれば、息が乱れるほどの大きな動きや、息を安定して保てないほどの負荷をかける行為は、歌には適さない(有利ではない)ことが自ずと見えてきます。レッスンでは身体を動かしながら発声することもありますが、負担になる動きはないので息が上がることもありません。むしろ身体の働きを促すことで息が安定する・息が増えるということが起きます。(♯α)

 

A. 鍛えるほうが有利かという問いに対しては、「鍛えないよりは鍛えたほうが望ましい」という回答になると思います。ただし、一言にアスリートと言っても、さまざまな種目によって鍛え方が異なるように、何を目的に鍛えるのかによって、鍛え方は変わってくるでしょう。

日頃から運動不足と思われるような人は、筋力が落ちていたり、硬くなっていたり、呼吸が浅くなっていたりということが考えられます。そういう人の場合、まずは身体を動かすことから始めてみるといいと思います。ウォーキングや軽いジョギング、水泳、程よい筋トレなど健康維持に役立つようなメニュでも十分だと思います。いきなりハードなトレーニングは却って向かないでしょう。

歌の場合、ヨーガやピラティスなど、身体をしなやかに使うことや呼吸と連携をとるようなメニュで鍛えることは効果的だと思います。筋力はないよりはあったほうがよいですが、何のために鍛えるのかという目的を明確に持って、目的達成に必要なトレーニングを行うことがよいでしょう。(♭Я)

 

A. ボディービルダーのようなカチカチの筋肉がついた身体は歌のためにはあまり役に立ちませんが、インナーマッスルをつけるようなトレーニングであれば有用かと思います。パフォーマンスをするために、自分の身体を思ったように動かせるということが大事で、そのために効率よく使える筋肉をつけることがめざすところなのではないでしょうか。変に力んでしまったり、固まって自在に動かないというのは、自分の思ったように身体を使えているとは言えません。

歌のために絶対に必要なことは呼吸であり、それを身体で支えるためのトレーニングが必須になるでしょう。息を吸って肋骨を広げ、広がった横隔膜を維持できるためには、体幹の筋肉、上半身と下半身をつなぐ筋肉、そして下半身、足の裏などにアプローチしていくといいと思います。

私自身はピラティスやヨーガ、スクワットなどが有効になると思い、続けています。また呼吸ということは有酸素運動のように心肺機能を高めることも有用なトレーニングだと思います。よく歩いて心肺機能を高めたり、プールで泳いだりすることも役に立つのではないでしょうか。(♯β)

 

A. 身体を鍛えることには、いくつも意味があります。しかし、筋トレに励んでもあまり意味がない気がします。何かスポーツに打ち込むといいと思います。スポーツ選手はほぼ例外なく歌がうまいと思います。最近スポーツ経験のない人が増え、伝わりにくくなっていると感じます。何かスポーツを本格的になさることをぜひ勧めます。ちなみに私は両親とも元プロスポーツ選手で、私自身はバレーボールと剣道をしていました。(だから「スポーツいいよ」と偏っている面はあるかもしれません。)

さて、スポーツで何が得られるのでしょうか。確かに肺活量、筋力が得られ、発声にいい面があるでしょう。しかし、発声面だけではないのです。例えば野球は、どれほど完璧なスイングでも、タイミングを外すとヒットは打てないでしょう。スポーツでは、タイミングを学べるのです。これはリズム感に通じます。名歌手は素晴らしいリズム感の持ち主です。伴奏とのずれ方、絡まり方。0.01秒のタイミングを要求されるのはスポーツも歌も同じなのです。

もちろん、スポーツの経験なく歌手になった人もたくさんいるので、一概には言えないかもしれません。しかし、身体の使い方、タイミングの重要性など、学べる面はたくさんあると思います。(♭∴)

 

A. 確実に有利です。そもそも歌手はアスリートです。私のまわりの優れた歌手たちは皆、鍛えていますし、欧米のオペラ歌手はジムで身体を作るのがいまや当たり前となっています。

もちろん、身体を鍛えたら即いい声が出るわけではありませんが、極論を言えば、声の主な原材料は、筋肉と息です。この両輪の片側を強化して損なわけがありません。また、鍛えることによって脳と身体のパーツの繋がりが強化され、思い通りに身体をコントロールできるようになります。

しかし、しなやかに使うということは常に意識しましょう。固めてはいけません。身体の柔軟性は損ねないようにトレーニングするといいです。

単純な筋トレも有効ですが、どうせなら楽しく取り組めるスポーツを取り入れるのもいいと思います。特にお勧めしたいスポーツは、水泳、ダンス、太極拳、ヨーガなどです。どれも全身をしなやかに使うスポーツです。

(♯∂)