A. 悪い状態で声を出しすぎると、喉に炎症をおこしたりポリープができたりしやすくなります。この場合は、声(声帯)を休めて、治るのを待たねばなりません。そのまま歌い続けると、さらに悪化してしまう場合もあるので注意してください。声がかすれるという場合、声帯が発声障害を起こしているという可能性も考えられます。
つぶした声の方が感情が伝わりやすいし、声もコントロールしやすいという人もいますが、決して勧められません。つぶした声は、声質が悪く、声量・声域も狭くなり、不自然で細かなコントロールができにくいものです。しかも、長く休めると、もとの細い声に戻ります。つまり、何ら身についていないのです。楽器を壊しているなら、不利になるばかりです。また、将来の不安も大きいでしょう。
ですから、喉をつぶそうとしたり、無理にからした声を出そうとしたりしないことです。充分に声を休めたあとに、ファルセット(裏声)や低い声、ハミングができるかどうかでチェックするとよいでしょう。
声は喉だけでコントロールできるものではありません。ラフな感じのするハスキーヴォイスですが、他のヴォーカリストにはない音色をつけ、さらに演奏レベルに扱えるのは、実は大変に難しいのです。基礎がしっかりと身につき、歌うための理想のフォームができあがっていなければ充分に使えません。
プロには、ハスキーな声の歌手、役者もたくさんいます。私は、声がよくても悪くても鍛えられていて再現性があればよいと判断しています。しかし、ヴォイストレーニングでは、そういう鍛え方をするのは稀です。基本を習得し、あとでどこまで応用できるかで試すことです。その応用で許されるレベルに入っていたら、そういう声もありといえます。
声は声そのもので勝負するわけではないのですが、持って生まれたものを充分に生かすことです。自分のやりたいこと、好きなことと、できることは(高いレベルでは)違うということを、知ってください。(♭π)
A. 医学的なことは、ともかく、単純に考えれば、ハスキーな声は、声帯が荒れた状態になっていて、雑音が入ってしまう声のような気がします。そうなると、喉をつぶしたような声を出しているのは、実際に喉がつぶれていたり、声帯の傷が慢性化していて、手術などで修復しない限り、ずっと傷ついたままということになりそうです。通常のように楽に声が出せないと、無理をして声を出すことになり、声帯周りの癌なども、発生しやすくなるのではないかと、心配になります。
今は、デスヴォイスなど、変わった声を使うことも、珍しいことではなくなっているので、もしかしたら、声帯に傷や荒れた部分がなくても、声に雑音を混ぜて、ハスキーな声を出せるテクニックがあるのかもしれません。声帯に傷などもなく、いつでも、きれいな声が出せるのであれば、問題はないと思いますが、そうでないならば、あるいは、声を出すのに苦労をするようならば、ハスキーな声は止めて、楽にきれいに声が出せるように、発声方法を修正していくのがよいのではないかと思います。
(♭Ξ)
A. 望まれた声を手に入れて、それであこがれが叶っているのであれば第三者がいろいろいうことはないと思います。ただ、つぶした「ような」という表現は気になりました。例えば、幼少期に喘息をもっていたり、100日咳などの症状があった人の中には、まれに通常よりもハスキーな声が日常化してしまっている人がいます。また、強い声を必要とする曲などを歌い続けてきた結果、ハスキーになっている人はいますが、そうではない人がハスキーのような声を物まねだけしていると、ハスキーではなくただ、息漏れを自ら起こしているだけで、かえって喉を傷めたり、音量不足、音域が狭くなるなどの弊害が起きることがあります。
ハスキーが魅力的な著名な歌手がいたとして、その人自身が最初からハスキーだったのか、ハスキーだったから売れたのか、その歌手が自らはハスキーになりたかったのかは違う問題です。そしてハスキーと喉をつぶしたような声というのはイコールではないので、「大丈夫でしょうか」という質問には、なりたい声になれているのならば問題ないが、あこがれている声になれているかは、ここではわからないという回答になると思います。
歌い続けて(使い続けて)きた結果ハスキーになった声と、歌いこんでいない(使いこんでいない)のに喉をつぶしたような声をだしているというのは似て非なるものでしょう。(♭Σ)
A. こういう声にあこがれる、こういう表現にあこがれるといった部分に関しては、本人の自由であり他者が意見するところではありません。ですが、喉をつぶしたような声にするために、わざわざ喉に負担をかけている行為に対しては全く頷けません。そのような声にしてまだ日が浅いのであれば、声の出し方を改善することで元の声に戻すことは可能です。もしすでに長期間にわたって喉に負担をかけ続けている状態なのであれば、もはや何とも言えません。そもそもあなた自身がこのままで大丈夫だろうかと感じているのが既に答えではないでしょうか。喉に負担をかけた声で歌っても、決して思うようには歌えていないはずです。喉が苦しいのはもちろん、本来なら歌える音域も声が届かなくなっているだろうと推察します。ハスキーな声へのあこがれから、いったんは真似してみた、でも同じ声にはならないことがわかったという一つの経験にはなりました。今後はもっと伸び伸びと、ぜひ、あなた本来の声を生かして歌ってもらいたいと切に願います。(♯α)
A. 「大丈夫でしょうか」という問いに対する答えとしては、「大丈夫とは言えません」となります。声の質というのは個人差がありますし、もともとハスキーのような声の人や、結果的にハスキーになってしまった人などいろいろいらっしゃると思います。ですが、生まれ持った声がハスキーではなく、美しい声をしているのであれば、その個性を殺してハスキーにしようというわけですから、身体の側に異常な出し方を強いることとなります。
ケガをしなくてもいいのに、骨が折れているのがカッコいい、傷があるのがカッコいいと、わざわざケガをするようなものだと思います。ハスキーがカッコいいと思うのは個人の自由ですし、あこがれる道を進むのは、リスクを知り、覚悟のうえで個人の責任において行えばよいと思います。今回のような問いかけに対する答えとしては、上記のようになります。自分の受け持っている人にはハスキーな歌い方を勧めることは断じてありません。(♭Я)
A. 歌っているジャンルは何でしょうか。クラシックやミュージカルなど、マイクに頼らず声をホールに響かせる必要がある歌唱や、繊細なピアニッシモを要するジャンルでしたら喉をつぶすなどということは勧められませんが、デスヴォイスを使ったり、ジャズ、シャンソンなどでは魅力としてとらえられることもあるかと思います。
ハスキーな声に憧れる気持ちはよくわかりますが、声帯に負担をかけないようにしていただきたいです。もともと声帯の形状によりハスキーな声が出ているのでしたら何も問題ないのですが、もし、お酒などのせいで声帯に炎症があったり、また、ポリープや結節ができているのであれば、長時間歌っていると声帯が合わさらなくなって声が出なくなってしまいます。その応急処置のためにステロイドを多用し、身体に副作用が出る、などというケースもあります。喉をつぶしたような声で、音域は充分ありますでしょうか。声帯が合わさりにくいと高音が出にくくなります。ハスキーな音だけではなく、歌唱力もつけて魅力のある声を生かせるように練習してください。
よく保湿を心がけ、声を出す時間に工夫をするなど、自己防衛で気をつけていくことをお勧めします。(♯β)
A. 多少ハスキーヴォイスを真似するくらいなら大丈夫です。応援団では、まず声をつぶせと習います。朝から晩まで旗を振りながら走りながら大声です。お坊さんもそうです。若いお坊さんは大声でお経をあげます。このように身体から大声を出し尽くして、枯れてしまった声から、出発するということです。最近は神経質になりすぎている人が多いですが、そういう考え方もあるのだということは知っておいてください。
ただ、質問されるということは、不安に思われているということですね。もし不安に思われるなら、トレーナーの立場からは「やめた方がよい」とお答えします。理由は「喉に悪いから」ではなく「何のために歌うのか」という深いモチベーションのところに、ぶれているものがあるのではないかと感じるからです。
アーティストとは、価値を作り出す人のことです。もし「自分でない誰か」にあこがれてそれをただ真似するだけなのなら、アーティストから一番遠いところにいるということです。
なぜハスキーな声にあこがれたのでしょうか。何となく大人なイメージ、かっこよい不良のイメージ、お酒、たばこ、夜のイメージでしょうか。
その根源のところから自らに問い直してみましょう。他ではない「あなた」がアーティストであるためには、何を使って何を表現したらいいのでしょうか。その答えが出たときに、次の段階に立てるでしょう。(♭∴)
A. ハスキーヴォイス、カッコいいですよね。あの声が鳴る仕組みは、声帯が完全に閉じていないために起きる小さな息漏れです。なぜ声帯が閉じないのかというと、声帯に損傷があるからです。健康な声帯はぴったり閉じたり開いたりを細かく繰り返すことによって滑らかな音を鳴らしています。声帯に何らかの傷があると閉じたときに隙間が生じます。風邪をひいたときや過度な飲酒の後に一時的にハスキーな声が出た経験は皆さんあるかと思います。あれは炎症を起こして声帯が腫れており、ぴったり閉じることができないから起こる現象です。それが常態化しているのが、ハスキーヴォイスの持ち主です。
ハスキーヴォイスになりたくて飲酒や喫煙や大声でわざと喉をつぶす人もいるようですが、この方法で必ずしも成功するわけではありません。中には歌など二度と歌えないレベルにつぶれてしまう人もいます。そしてハスキーヴォイスには可逆性がない、つまり、気に入らなかったり飽きたりしても元の声に戻すことはできない、ということは覚えておいてください。
ご質問にある「喉をつぶしたような声」は、声帯に損傷がないのに、喉に力を入れて疑似的にハスキーヴォイスを出している状態かと推察します。自然な発声ではないため、あまり聞いていて気持ちのいい声にはならないと思います。
上記の理由から、無理にハスキーヴォイスを出すのは得策ではないと考えます。息を混ぜるようにして歌うウィスパーヴォイスあたりで妥協してみるのはいかがでしょうか。(♯∂)