A.短いフレーズで2行くらいならやりやすいでしょう。1曲全部になってくると声で歌わされているみたいになってきます。声が目立ちすぎるのもよくないし、間が抜けてしまうのもよくありません。
一本調子になってくるし、テンポを守ろうとしているようになってくる。練習中はそれでいいのですが、感情がですぎるのはあまりよくありません。言葉の方と音色の方とをいったりきたり、気持ちと音楽、気持ちがもっていって、それが声で表れていけばいいのです。
音楽ですから、リズムもテンポもメロディも言葉も、正解に近い理想というのはあります。そこからはピアニストと同じです。どうずらしていくか、ずらすことが鈍くなって心地悪くなるのではなく、正確なものよりも心地よくなりずれを作るのです。
曲は楽譜のことを考えて頭にいれているのではなく、最低限音をとっていくと楽譜のところに情報がなくなって単純になってしまいます。それを歌い手はよみがえらせることです。作曲家が考えなかったようなずれを作って、最後まで自分自身で収拾をつけていかなければいけません。歌は難しいうちは、最初は練習になりません。いろんなものがわかってきたら発声の練習にも、リズムの練習にもなります。
最初の2行のところで歌が表れる舞台を作っておく。そこでお客さんがその時空を超えたところで聞くというものがあって、そこに声をうまくおいて最後までもっていけたらいいのです。普通の練習のレベルでは、最初の2行でうまくかけあって、どれだけ完全にするかということです。それができればいろんな自分のパターンが見えてくるのではないかと思います。
一行の後半もいろんな工夫を歌い手はしています。そこが決まるか決まらないかがほとんどでしょう。シンプル、名曲といわれる歌ほど、誰でもよさはわかるのですが、実際にそのよさを出そうとする方は大変です。やりすぎるといやらしくなります。