A.ある程度ヴォイストレーニングが進んでくると、よくおちいる問題が、「歌が一本調子」という壁です。なぜ、歌が一本調子になってしまうのか、それは、一本調子で歌っているからです。やっと「よい声」が少し出せるようになると、歌のどの部分も、その「よい声」で歌わなければと、音高やリズムやフレーズの長さなどには関係なく、しっかり「よい声」を網羅しようとしてしまうため、身動きがとれなくなってしまうのです。
それでは、どうすれば一本調子から脱することができるのでしょうか。根本的な解決方法は、大きな声も小さな声も、強い声も弱い声も、短い声もロングトーンも、あらゆる声を「よい声」で出せるようにすることです。これは、先が長くなかなか達成できることではないので、「よい声」だけで歌うのを諦めるというのも一つの方法です。
もう一つの方法は、「よい声」の8割程度の「そこそこよい声」で、声の強弱・長短・明暗など、いろいろな声を出す練習をして、それらの声を使って、曲を構成して歌うことです。少し難しいですが、一番前向きな方法ではないかと思います。(♭Ξ)
A.発声での一つのトレーニングとしてはクレッシェンドを覚えることです。素晴らしい歌手にはジャンルを超えてクレッシェンドをうまく活用する歌手が多いです。声に膨らみを踏み、テンポ、感情を聞き手に伝えるのに有効な手段です。
あとはフレーズの前のブレスでどんな感情が見えるかでしょうか。歌が一本調子になる人はブレスに色がない人が多いです。もっと言うと、歌う前のブレスが一本調子ということでしょうか。
そしてこれらのことを、しっかりとやっている歌手、音楽家の音楽をより聴いて感じる感性と、プレイヤーがどうやってその音楽を作っているのかを研究することが重要です。感性はおのれで磨かねばなりません。だれかが作ってくれるものでもありません。自分の音楽、素晴らしい音楽家の音楽。何が違うのかを時間をかけて考えていきましょう。声をだす時間も大事ですが、このようなことにどれだけの情熱と時間、時にはお金もかけられるかが感性や音楽表現をみがくことにつながると思います。(♭Σ)
A.一曲の音楽を作りあげるとき、例えるならキャンバス(曲)に絵を描くこと(あなたの音楽)に似ています。その曲を歌ったときに一本調子だなと感じるとき、または周りから指摘されるとき、曲全体を把握はしたが細部には気持ちが行き届いていない、まだ鉛筆だけのスケッチの段階ということです。キャンバスを見て、何かが描いてある(声を出して歌っている)ことはわかっても、色もなく(声に響きがない)、陰影もないので平面的(リズムが曖昧、音をなぞっているだけで歌詞の意味が伝わらない)といった具合です。
ここから見えることは、歌詞の母音部分の声に響きを乗せる、拍子に合わせて遅れずにリズムを捉える、歌詞の言葉を立たせる(朗読してみるといろいろ見えてきます)などです。これだけでもすでにやることはたくさんあります。メリハリがない人の多くは、体感速度が遅いようで声の立ち上がり、発音の仕方に遅れが見て取れます。手拍子またはメトロノームの拍子に合わせて歌ってみると遅れている部分に気づけると思います。(♯α)
A.いろいろなアプローチの仕方がありますが、まずはフレーズ感が乏しいのではないかということです。息が足りなくなり曲を歌うだけで精一杯のため一本調しになる人、息も足りて声もパワフルだけど一本調子になる人、大きく分けてこの二つで見ていきます。
前者は息の流れ、息の使い方をフレーズの中で体感していくとよいです。方法はシンプルで、その曲全体を「子音Z(ズ~)」だけで歌います。そのとき子音Zが抜けてしまう、上手く発音できない部分がすなわち息が足りていない、息の流れが間に合っていないフレーズということです。子音Zで歌い繋いだ後で歌詞に戻してみると、全く違った景色が見えてきます。
そして後者の場合は、エネルギー過多だったり、音の立ち上がりが遅いために声が重くなるといった傾向があります。母音ア又は歌詞で、曲全体を全てスタッカートで歌ってみてください。遅れずに瞬間瞬間で音を捉える感覚を得た後でレガートに戻すと、必ずフレーズに動きが出てきます。(♯α)
A.「歌唱の一本調子」という状態には、いろいろな原因が含まれていると考えられます。発声的な部分も考えられますし、音楽の解釈の部分も考えられます。この場合、比重としては、「音楽の解釈」という部分の改善が重要になってくると思います。「音楽の解釈」といっても難しい話ではなく、「歌詞や曲調を把握して歌っているのか」という部分のことです。
練習方法としては、気持ちを込めての朗読から始めてみてはいかがでしょうか。はじめのうちは照れ臭いと思いますが、それを全身全霊で取り組むのです。遠慮しているうちはなかなか自分の殻を破ることができません。この自分の殻を破ることが、一本調子を改善するためにとても重要になってくると思います。誰かの真似をするのではなく、自分の気持ちでどのように表現したいのかということがつかめてくると、徐々に設計図が見えてくると思います。その設計図を参考にしながら、音楽的な部分も味方につけて遠慮せずにどんどん歌いこんでいきましょう。自分だけの世界から、聞いている人にその内容や情景、気持ちが伝わっていくように、一所懸命歌いましょう。
表現者はエモーショナルでなくては意味がないと思います。聞く人の心をつかめるよう、普段の生活の200%くらい気持ちを込めて全身全霊で歌ってみてください。
(♭Я)
A.歌唱時のフレージングを工夫していかれることが課題になってくると思います。
まず大きくとらえていくとしましょう。大体の曲は4小節、8小節のまとまりでフレージングがついています。わかりやすい楽譜だと、その4小節間にスラーがついていたりします。この4小節をひとまとまりに感じて歌ってみることをお勧めします。4小節のまとまりが感じられるようになりましたら、次は8小節のまとまりを感じて歌ってみます。もはや文章の句点すなわち「。」が来ているまとまりかもしれません。
文章のまとまりが意識できたら、今度は言葉のまとまりについて考えてみましょう。大体の文章は名詞と助詞の組み合わせが含まれていることと思います。日本語の場合、名詞の語頭をはっきり言うこと、助詞を少し抜いて言うことで、言葉のシェイプがクリアになり、一本調子を避けることができます。日本語の歌詞にそのまま音符を付けると、どうしても八分音符の羅列になってしまい、そのまま歌えば一本調子の歌になってしまいまねません。ですから、しっかり歌う音節と抜いて歌う音節を分けて考えてみるといいと思います。
さらに一番小さい単位だと、音節同士の問題です。一語一語の間をどのように移行させて歌うかということを考えてみてください。(♯β)
A.歌を勉強するときに大事にしなくてはいけないのは、なにより作曲者の意思だと思っています。ある曲を歌うというのは、その作曲者の意思を「自分の声で」再現することなのだと思います。その曲の美しさを伝えきれないという意味では、一本調子も感情過多も同じことだと思います。
曲の美しさ、曲が何を言いたいか、曲がどのように演奏されたがっているか、それを見極めるのが練習です。
そして「自分の声で」曲の美しさを伝えるにはどうしたらいいかということを通して、自分の声を知るということが必要になっていきます。(♯ё)
A.歌唱が一本調子になる理由として考えられますことは、どのフレーズも常に同じようにブレスをすることです。
そのことを防ぐためには、歌詞の次のフレーズの内容によってブレスを変化します。例えば次のフレーズの内容が「嬉しい」であればそのフレーズに入る前に「嬉しい」と感じてブレスします。そのようにして歌いますと、少なくとも歌い手は嬉しいと感じて歌うことが可能ですし、聴き手にも嬉しい感じが伝わると思います。
そのこと以前に歌詞の内容、音の強弱の違い、その強弱と歌詞のセンテンスの結び付きを熟知することも大事です。
以上のことに気をつけると一本調子ではなく、メリハリがつく歌を歌うことができると思います。(♭й)
A.まず考えたいのが、一本調子で本当にいけないのか、ということです。往年の大歌手は、ワンパターンというか、客の期待する一つの歌い方で押し切るということもありました。もし素晴らしく鍛えられた声や歌い方があるのなら、それを通すというのもありです。
それがいやなら、歌詞を読み込むことです。違う歌詞なら当然違う歌い方になるべきでしょう。歌詞の朗読を変えられるなら、歌も変わってくるかもしれません。
ウィーン国立音大の先生は「変われ!変われ!」といいます。フレーズごとに違う表現になるようにと。曲を通して聴いても飽きない個性ある深い発声と、変わることと。勉強を続けていきましょう!(♭∴)
A.発声の面からは声の大小を体でコントロールできるかということですが、ここでは表現の面から考えてみます。歌が一本調子だと、だいたい歌詞の音読も一本調子です。歌詞を音読して伝える方法を何通りか作ってみることです。例えばすべて強く読む、すべて弱く読む、
すべて高めの声で読む、すべて低めの声で読む、あえて同じ高さでロボットみたいによむ(意外と難しい)、強弱や大小を極端につけてよむ、はじめの一行だけでも徹底的に練る などなど。(♭∴)
A.まず、歌詞を読んでみましょう。感情を込めて歌詞を読むとしぜんに言葉としての強弱が見えてくると思います。誰にどのような感情で言葉を言っているのかわかればそれがヒントになります。
そのヒントをもとに、楽譜または歌詞カードに強弱記号などを書いて練習してみましょう。
それ以前に大きな声(大きく響く声)や小さな声(小さく響く声)を身につけておかねば、ヒントがあってもそれを表現できないのでその練習もしてみましょう。
小さいところではウィスパーボイスなどを利用するのも一つの手段です。サビの前などの盛り上げたいところではビブラートなども効果的なのでさまざまなテクニックがあるうえでメリハリをつけていくと、一本調子から変化していくと思います(♭Ц)
A.「いろんな音色の声が出せるといいな」「全体的にもっとメリハリがあるといいな」というフワッとした考えでは、いつまでもよくなりません。具体的に考えましょう。あなたの考える「一本調子でない声」「メリハリのある歌」とはどのようなものでしょうか。
音の強弱、言葉のアクセント、歌詞の伝える感情、リズムやビート感、いろいろあると思いますが、これらの落差を大きく出していくことが大切です。
やりたいことを楽譜に全部書き込んでみましょう。強弱記号はもちろん、「やわらかく」「硬く」「楽しく」「悲しげに」「つぶやくように」「はっきり」「抑えて」「朗々と」「1拍目にアクセント」「裏拍は軽めに」「ここから空気を変えて」...思いつく限り全部。書くことによって曲全体の構想が練れますし、頭の中が整理されます。そして練習の度に目に入るので、そのように歌うクセ付けができます。
こういった方法は、よくオーケストラの指揮者が演奏者にやらせることです。「68小節目の頭はフォルテで、69小節目の3拍目裏にはメゾピアノになるようデクレシェンドと、あらかじめ楽譜に書き込んでから練習に臨むように」など、細かい指示を初回の稽古前にFAXしてくる指揮者もいます。
指揮者は自分で音を出せないので、他人の音への要求が強くなります。ひとりで歌うときも、「指揮をする自分」と「歌う自分」とに分けて考え、「歌う自分」に対してはっきりと要求を伝えましょう。(♯∂)
A.一本調子を直すには、まずテンポにより緩急をつけてみるということがあります。
自分ではつけているつもりでも、聴いている側からするとそれがあまり感じられていない場合があります(私自身もイタリア人の師匠とのレッスンでよく一本調子だと言われました)。オペラ歌手やミュージカル歌手が舞台上で大きく演技をするように、歌にも大きく緩急をつけることが有効です。
メリハリをつけることについては、いろいろな対処法があると思いますが、音に対してより強弱をつけるのもその一つです。
フォルテが表記されている場合は、その前にデクレッシェンドしてフォルテで歌ったり、ピアノが表記されている場合は逆にクレッシェンドしてからピアノで歌うことさまも効果的ではないでしょうか。
音の強弱やテンポの緩急の組み合わせ方は無限にあります。これらを今まで以上に大きく表現して歌ってみてはいかがでしょうか。(♭К)
A.歌おうと思っている曲の原曲(音源)があれば、それを最初によく聴いてみましょう。そして、その歌手の人がどんな風に歌っているのか、楽譜や紙に書き取ってみます。強く出したり、弱く出したり、またはささやいていたり、語っているようだったり・・・いろいろありますね。
「学ぶことは真似ること」と言う言葉があります。まず、お手本通りに歌ってみるとよいでしょう。
テクニックの観点から言えば、上手に呼吸ができていること、はっきりと歌詞が言えていること、これだけでも充分メリハリはついてきます。
もっと言うならば、歌詞の子音をはっきりと出すことです。例えば「ハ」ということばを「ド」の音のときに言いたいとき、その音が来てから「ハ」と言うのでは遅すぎるのです。この「ド」の音のときには「ハ」の母音の「ア」が来ていてちょうどよい、ということは、「ハ」の子音は「ド」の音より前(前の音の直ぐ後)に出ていなければ遅れて聞こえてしまうわけです。他の子音も同様です。ことばをアルファベット表記にしてみるとわかりやすいですよ。
このことに気をつければ、テンポ感も一定になりますし、メリハリがついて、一本調子ではなくなります。
またカラオケがあればそれを聴いて、低音のリズムがどう刻まれているのかに耳を傾けてみます。リズムに乗れば、音楽は前へ前へと進んでいきます。音やリズム、ことばを感じながら歌えば、しぜんとメリハリがついてきますよ。練習してみてくださいね。(♯Å)