A.舞台を経験することはとても大切なことです。声優の専門学校でも基本的に舞台に立つことを前提にしてトレーニングを行なっていきますし、またはプロの声優や映像を中心として活躍している俳優でも、定期的に舞台に立つことを心がけている方が多くいます。それだけ舞台に立つことは、表現者にとって大事なことなのです。
舞台での演技は、テレビや映画などと違って、大きな空間でお客さんに向けて行なわれるため、演技が大きく、リアルか?と問われると少し大げさな面もあります。しかし大げさに、大きく演技をするためには、それだけ気持ちのほうも大きくしなければなりません。気持ちを大きく作ることができれば、必然的に小さくすることもできるからです。ですから演技のための気持ち作りや、大きく気持ちを作り、大きく演技するということを舞台を通して学ぶことができるのです。
また実際にお客さんを前に演技をすることで、その空間を感じたり、お客さんからの反応を感じながら演じることができるのです。カメラの前や、マイクの前で一方的に演技をするのではなく、反応を感じながら演技をすることで、自分自身の演技のよしあしがその場でわかるのです。その場で反応を感じながらも演技を続けていき、または微調整するなどして演技をよりよいものにしていくことができるのです。とはいえ、そういった境地に達するまでには時間がかかるとは思うのですが、真剣勝負だと思って舞台を続けていくうちに身についてくるはずです。
また舞台では、NGを出して、演技を止めることはできません。そういった意味でも真剣勝負ですし、緊張感もあり精神力が鍛えられます。また作品を通して、リアルに時間が流れていく感覚を身につけることもできます。
稽古期間も大切な時間です。読み合わせから始まって、本番に向けて1ヶ月から2ヶ月は最低でも稽古をします。ひとつの作品に対して、それだけの時間を費やして取り組むわけですから、作品に対しての理解も深まりますし、役作りも深まります。そうして時間をかけて役作りを深めていくことで、よりその役が自分のものになっていきます。そしてそうした過程で役作りした経験は、その後演技をするときに役立ってきます。深く深く理解したという経験が、次の役作りの際には、もっと効率のよい役作りとなって現れてきます。だからこそ、じっくりと稽古期間のある舞台を経験してほしいのです。