Q.姿勢のチェックすることを教えてください。
A.実際の練習では、力が入らないように(特に喉に)、体をしなやかにして固めずに行なってください。前のめりにも、まっすぐにもならない程よい感じでやってください。理想は、次のチェックリストのような状態ですが、そこから入るのがよいとは限りません。気づいたら、こうだったというのでよいのです。[結果オーライの法則]と私はいっています。[結果として、次のようになっていること]をいずれは確認してください。これを同時に、すぐにはやれません。発声と姿勢との両立は、感覚や体が伴わないと無理なのです。共に身につくには、時間がかかるものです。
これで一つずつチェックして覚えるのではありません。やっているうちに、こうなってくるのが望ましいというものです。
□自然でゆったりとした楽な姿勢→ しなやか、美しい
□顔はいく分上向き→ あげすぎない
□目はしっかり見開き→ 視線はまっすぐより少し上に
□舌先は前歯の裏。両側を奥歯につける→ 舌は平たく
□首は立てる→ 首を前傾するとのどを圧迫する
□あごをひく→ うなじを伸ばす [あごの固定は、とても大切です]
□肩に力を入れない→ 少し後方にひき、まっすぐおとす
□胸をやや上方に広げる→ 高く保ち、おとさない
□腕は力を抜く→ だらっと下げる
□腰は前に入れる→ へっぴり腰にならない
□背筋を伸ばす→ ただし、まっすぐにして張りすぎない
□お尻の筋肉を肛門の方向へ締める→ ヒップアップする
□下腹部をゆるめる→ 内側に吊りあげる感じ
□太モモの内側を前方にまき込む感じ→ 骨盤を前方に少し出す (特に高音のとき)
□かかとを少し開く→ 重心は開いた足の中心
□つま先の方を開く→ 体重はやや前方 (両足の親指へ)
Q.体を曲げた姿勢で声を出すのは、なぜですか。 A.最初は体を、前屈させたところから始めるとよいでしょう。ちょうどスポーツの試合前に選手たちが「オース、ファイト」などと気合いを入れるように曲げます。こうすると、つっ立っているよりも、体が一体感をもって感じられるでしょう。重心も低くなります。立ち姿勢というのは、初心者にはかなり難しいので、この姿勢をすすめています。イスに座るのもよいでしょう。 前腹が押しつぶされて働きにくくなるのも、側腹や背腹が動くためにはプラスでしょう。声が出るときにお腹が動くようにするために、お腹(側筋や背筋)が動きやすくしておくトレーニングです。 声を、お腹の底から出せるようにしていくために、まず体と呼吸の流れを感じてください。つまり、呼吸のなかにある呼気と吸気のタイミングを自然と生かした発声をめざしていくのです。 Q.前屈姿勢での発声のトレーニング を教えてください。 A.(1)体を前屈させます。 (2)背筋をピンと伸ばし、床と平行になるようにします。(日本人は猫背になりがちなので、少々、胸を上にそらすようにするとよいでしょう。やりすぎないように。) (3)あごをひきます。首をまっすぐにしないとあごをひくと首にあたり、うまくひけません。 (4)手は脱力して下へたらします。 (5)息を吐いてお腹の横、後ろが動くのを感じてください。 (6)声[ハア-]を静かに出していきます。 胸声では、響きは胸の真ん中や背骨-尾てい骨のライン、頭声では軟口蓋から頭のてっぺんに集まるイメージです。
Q.息を3回吐いて声にするトレーニングとは。 A.(ハッハッハッ) 「ハッ」 これは、息を深く3回吐くことによって体を使いやすい状態にするとともに、その深い息を吐くときにのどを開き、声のポジションを捉えやすくします。これまで、あまり声にしていなかった息で、深い声を出すためのトレーニングです。のどの力は抜いてください。息を強く、のどにぶつけてはなりません。 Q.息読みのトレーニングとは。 A.曲を声を出さず、息だけで歌ってください。 ピアノの音色に合わせた練習では、実際よりも細くカン高い声になりやすいので気をつけましょう。(太くしっかりした声をつくるには、オクターブ下の音も弾いて、それにイメージを合わせていくとよいでしょう。事実、男性は常に聞いた音の1オクターブ低く出しています) 息でトレーニングするときには、高い音を聞いたときにも、息を吐いてみることです。これは高音をこういう息で出せということではありません。息でしっかりと支えて、体からの声でとるトレーニングに入るためのイメージづくりです。 多くの日本人は高い声を、弱い息、小さな声にして、ただ音にあてたり、ひびかせるようにしてしまっています。これでは音響加工なしには通用する声になりません※。 口からのどの間は、動かすと、音色が変わります。少しずつ、楽にひびくところをみつけていきましょう。のどを開けましょう。のどは、単なる「通り道」であるとイメージしましょう。いつも、のどが乾かないように注意しましょう。 Q.声の高さに息の強さや声の大きさが必要ですか。 A.必ずしも関係ありません。単に高く出したり、とても高い声を出すなら、息や声量は抑えなくてはなりませんし、危険です。ここではイメージと、体づくり、声づくりが目的です。 Q.声づくりは、声の芯と深い息との結びつきとは。☆ A.「声の芯」というのを私は想定しました。オペラ歌手が低音で、息をゆっくり吐いて声にしても、胸がビリビリ鳴ります。(のどではありません)深い声が出ている役者がせりふをいうと、体の底から声が響いてきます。口内、頭の方でつくった声だけでは、遠くまで聞こえません。胸に声の芯があると、遠くまで通る声が出るのです。 声の振動は、ハミングなどで顔面の方で捉えることが多いのですが、まずは話声域か、それより低い胸声で充分に胸での共鳴を感じておくことが大切です。そこで充分に増幅しておくことです。ここは、日本人は弱いところです。 前屈して低い声を出すと、背骨や肋骨がひびいてきます。そこで、声を宿しておいて、体(呼吸)と連動させておくのです。低音域で徹底して深い声づくりをします。(難しい人は、省いてかまいません) このあたりは、日本ではどちらかというと、声が高く軽い人が、歌のトレーナーや舞台のディレクターをやっているせいか、理解していただきにくいところです。そういう人は指導していても、本人自身の声はとても弱く、高いだけのことが多いです(高いから届く)。いわゆる鍛えられた声ということがわからず、それをのど声(悪声)と判断している人さえ少なくありません。世界中の声を聞いたら自明のことですが。 Q.深い息や深い声にするには、どうすれば体から声が出るようになりますか。 A.ほとんどの人が、浅い息をストレートに生の声にするか、のどをはずして上に響かせています。のどに発声のくせをつけて、高い音をあてることがヴォイストレーニングであり、そこで脱力してできることが正しい発声だと思っているのです。(それを目指すマニュアルがとても多くなりました。この場合、くせといっても悪いものではないのですが) 一音でもよいから、まず深い息を深いポジションで声にするようにしましょう。声を深く太く出すことを意識してみることです。声を鍛えるとは、のどを強く使うのでなく、体に支えをもつのです。 出している声には、威厳があり、生命が通って、パワーに満ちていなければいけません。声を発したら、そこに何かが起こるようなことを感じさせる声を目指しましょう。 Q.声をつかむイメージとは。 A.あなたの胸の中心に声の芯(ポジション)というものをイメージして、それをつかむと声が出やすくなると思ってください。粗雑な練習をすると、のどはすぐに上の方へあがってきてしまいます。そこでは体が使えず、のどが働き、声はビリビリと浅く拡散して、大きく鳴ります。そうならないように、次の手順を踏むとよいでしょう。ただし、のどの方から胸の方へ押し下げたり、押しつけたりしてはいけません。胸声を強化していくのです。 Q.声をつかんでみるトレーニングとは。 A.1.のどを開く(のどをはずす。つまり、息や声を出すときに、のどに触れないようなイメージにする) あくびをしたあとの状態(軟口蓋あげる) あごを固定します。 2.深い声のポジションをとりにいく(押し下げないこと、胸の中心に芯のあるイメージ) 「ハイ」と胸の中心で声にします。 3.声を少しずつ強く太く、大きくしていく(強くすると、音は高くなりがちですが、低い音と同じヴォリューム感が保てればよい。) (♭)