A.そのように、筋肉を、個々に捉えて使うのは、原因と結果を取り違えた、極めてよくない考え方です。発声は筋肉の働きによるのですが、多数の筋肉の総合的な連動で動いています。それは、イメージによって正しい結果を起こした時に、感覚として覚えていくしかないのです。
これまで、多くのすぐれたトレーナーやアーティストが否定してきたにも関わらず、常にこういうことが求められます。それは、その音に届けば、それでよいとする安易なノウハウのようなものにすぎないのです。
こうした感覚は、新しい方法として、科学的、理論的で、誰にでも早く大きな効果をもたらすという期待からくるのでしょう。それは、基本的な態度として違っています。それにしても、よく出てくる質問です。長期的な成果で判断しない人たちがよいと言っているのを鵜呑みにしないことです。何よりも、部分的に使おうという意識は、余計な力や緊張を招き、くせをつけてしまうのです。それで何音か高くあたっても、表現として実力のつかないのは変わらないのです。