A.実際によいものを本当に聴いてみて、その気持ちになってやったときに、どうして同じ人間なのにできないのかということが出てきます。そのときに、自分はまだ体が弱いとか、息が吐けないとか、音がきちんと捉えられないとか、そういうことがわかってくるのです。気づくということは、そういうことです。
レッスンでも同じです。指導されたら伸びるというのではなく、まず、そのための感覚を磨いて、そこに体や声が宿ってくるのを待っていないといけません。それは、あるとき、体の条件やコントロールの条件が整ったときに、パッとできるのです。その人がそれに気づける基準があれば、そのことはものにできるのです。
ウルトラCのような、すごいことは何もわからないままできるのではありません。絶対にできるはずだというところのイメージが宿ってきてから変わってきます。体がついていかないときはできないのですが、あるとき力が抜けてリラックスしたらできることがあるのです。それは二度と失敗することはありません。そうやって、ワンランクアップするのです。
それはその人が、その感覚の中で待っていたからです。待っている感覚は、自分の中にもともとあるのかといったら磨かないとわかってこないのです。優れた人たちがみんな共通してもっていることを知り、待つしかありません。
アマチュアの人は、やってはいけないことを一所懸命に守っていることが多いのです。だから、そこから抜け出せないのです。プロというのは、プロの中でみんな共通してもっている感覚というのがあるのです。それに対して、自分の感覚を近づけていくというふうに思えばよいと思います。