A.もっとも簡単で容易な方法は、繰り返し歌うことです。何百回、何千回と、繰り返し歌って、自然に口ずさめるまで覚えることが、一番のお勧めです。しかし、時間が許さないこともあるでしょうし、覚えたつもりでも、本番では出てこないこともあるかもしれません。
まず、覚えたつもりの歌詞を忘れてしまう場合です。繰り返し練習したおかげで、歌詞と曲のイメージや発声が、丸ごと体に入っている状態だと、本番中に、何かのきっかけで、どれか一つ(発声やイメージ)が乱れると、ついでに歌詞までわからなくなってしまうことがあります。
予防法としては、歌詞のイメージとは違う感情で歌う練習をすることです。「喜び」の歌ならば、「悲しみ」や「怒り」など、真逆のイメージなどで歌ってみると、意外に歌詞が出てこないことがあります。その部分を、洗い直して、さまざまなシチュエーションで練習すると、より歌詞が定着していくでしょう。
次に、時間が足りなくて、暗譜が進まない場合です。なるべく数多く歌うことは第一ですが、それだけでなく、歌詞を書き出して、いろいろな観点から分析することも、助けになります。また、フレーズごとの歌詞の頭の文字を覚える、という方法も役に立ちます。例えば、「故郷」という曲なら、『ウサギ追いし かの山、小鮒釣りし かの川、夢は今も めぐりて、忘れがたき 故郷。』をフレーズの頭だけ、『ウ、か、こ、か、ゆ、め、わ、ふ』という具合にです。([E:#x266D]Ξ)
A.そんな防止法があるなら私も知りたいと言いたいですが、多数出ていると難関は暗譜になってきます。いろんな稽古が重なってくることもありますが、基本的には立ち稽古(動きをつけながら歌う)には暗譜でのぞまなければいけないので、毎日暗譜に追われている状態です。何度も歌っている作品は自然と考えずに口からでてきますので、どれだけの数を歌ってきたかも重要なのかもしれません。
私の場合は、現在のほうが暗譜が早いです。それは、公演の数をこなす中で暗譜することが日常になってきたのもありますし、自分なりの暗譜のやり方に慣れてきたからです。
以前はひたすら何度も歌って体に覚えさせていたという印象です。今は、実際によい発声の状態で歌うのは、歌詞が体の中に入ってからになりました。
その前に、自分の手帳に歌う歌詞を書き日常持ち歩いています。自分でわかりやすいように、フレーズごとに段落を変えたり、文法を考えたりしながら目でおったり、時には声に出して読んだり、一番多いのはノートなどに読みながら何度も書くという作業です。目と耳と喉と手で頭に覚えさせると言ってもいいかもしれません。時には立って動きながら歌詞を朗読したりします。
歌詞を忘れるというのは、基本的には練習不足であったり、緊張などが大半ではないでしょうか。それを軽減するには準備が必要であり、不安の軽減が歌詞忘れの軽減につながると考えます。([E:#x266D]Σ)
A.旋律と歌詞をセットで練習するだけの人が多いようです。すると、例えば「歌詞だけ朗読してください」とお願いしたときに、割とすぐに歌詞が出てこなくなり、口ずさみながら歌詞を探すといった様子を目にします。音程やリズムに歌詞を乗せた状態でのみインプットしているので、音程・リズムを取り除いてしまうと歌詞が単独では立ち現れなくなるのです。
新しい曲を練習する際は、ぜひ「旋律」と「歌詞の発音」を分けて練習することを取り入れてみてください。必ず今以上に歌詞が定着しやすくなります。ちゃんと歌詞だけを、詩を朗読するように(音程・リズムは出ないようにして)発音します。歌詞が抜けてしまう部分・まだ不安定な部分がおのずと見えてきます。歌詞が定着してきたら、さらに舞台でのセリフのように普段よりやや高めのポジションで、しっかりした声で発音します。経験上ですが、身体を使って発音することでより定着度合が増します。([E:#x266F]α)
A.若いころだと、何も考えず、特に努力をしなくても、何度か歌っているうちにおおよそ覚えてしまうことが可能ということもありますが、加齢とともにその力はだんだんと衰えていきます。よく、小中高生が英単語や漢字、歴史を覚えるような、むやみやたらと暗記をするような方法ではない、新しい「覚え方」を開拓していくことが重要ではないかと思います。
まず、歌詞の内容、ストーリーがわかっているかです。ただ単に音に合わせて歌っていると、歌詞をシンプルに読むということが意外とできなかったりします。音の抑揚に合わせてしまい、変なアクセントになっている場合は要注意です。歌詞に何が書かれているのか。それを理解するとともに、歌詞を何度も朗読することをお勧めします。
頭の中身の整理という意味では、歌詞を何度も手書きで書き写すという作業もお勧めです。客観視できるとともに、頭の中身を整理できますし、歌いすぎて喉が疲れるということも回避できます。
思い出しながら書き出すのもお勧めです。特に外国語の曲の場合、スペルを確実に覚えているかの確認もできます。アクセントの位置を再確認することにも役立つと思います。
このように、「ただ覚える」ということよりも、さらに内容を整理する方法、頭の中で様々なことが関連付けられるようにしていくと、結果的に覚えるのが早くなったり、忘れにくくなったりしていくと思います。また、練習で自分で自分のプロンプターになる方法もお勧めです。こちらはやや高度になりますが、それぞれの歌いだしのフレーズの少し前に、次の歌詞を相手に提示できるようにしゃべるという練習ですが、癖づくと、本番中にもその時のシミュレーションが活かされ、あたかもプロンプターが助けてくれているかのような感覚でいられると思います。([E:#x266D]Я)
A.暗記などは、夜寝る直前が脳に残りやすいと聞いたことがあります。それを耳にしてからは、寝る前に暗譜をするようにしています。
以前は朝、何も情報が頭に入っていないクリアなうちにやったほうがベターなのかという先入観があり、朝の通勤のときにやっていたこともありました。しかし切羽詰まってくると、回数が大事だと思うので、朝昼晩、暇を見つけては、ひたすら暗譜します。
歌詞のストーリーを自分なりに構築すると覚えやすいです。1番は現在の話し、2番は回想の話しなどというように、自分で忘れにくいような筋書きを作って覚えていくのです。実際、詩の分析をしてみると、そのような背景が読み取れることもあると思います。
詩によっては脚韻、頭韻を踏んで作られている場合もあるため、それを踏まえて覚えていくのもいいと思います。メロディの違いとともに覚えるのもいいと思いますが、有節歌曲などの場合はその手は使えないので、やはり物語仕立てで覚えるのがいいでしょう。([E:#x266F]β)
A.私が必ずする練習は、音やリズムを取り除いて、セリフとして初めから最後まで早口で空で言えるようにする、というものです。まず歌詞をメモ帳に手で写します。パソコンの打ち込みではなく手で写すというのに意味があると思っています。これをいつも持ち歩いて、電車の中とかでも、一瞬見たり、ポケットにしまったりしながらブツブツ言いながら覚えていきます。
私はオペラのイタリア語をはじめにこうやって言葉として先に覚えます。そのほうが音取りも早いし、暗譜も早い気がします。この勉強法、歌詞を先に覚える方法は私の師匠に教わったものです。
もう一つの練習法は、実際に音を使って歌うのですが、実際より少し速めのテンポで練習します。アカペラのほうがよいと思います。間違えようが(その場で作詞しながら)最後まで歌うというものです。完璧になるまで覚えようとするより、間違えたほうが覚えます。また、その場で作詞しながらでも最後まで歌い通せると自信にもなります。本番より速めのテンポでやるほうが、頭の回転として、実際のテンポで歌うときに余裕が出ます。
([E:#x266D]∴)
A. 歌詞だけ覚えるというのは、20代ぐらいまでは難なくできる人が多いようですが、年齢を重ねると記憶力が低下するのでだんだん難しくなってきます。ですので、歌詞を何か別のものに紐づけて覚えることをお勧めします。
第一に、歌詞と意味を結び合わせて覚えること。当たり前のことですが、案外できていない人が多いようです。外国語の場合は、自分で辞書を引いて言葉の意味をひとつずつ調べるくらいでないといけません。日本語も、記号のように歌わず、意味を理解して歌にすることが重要です。意味がわかれば次の歌詞はおのずと出てきます。
第二に、脳内で歌の情景を映像化すること。例えば「蛍の光」なら、「初夏の夜、暗い窓辺で集めた蛍の光のもとで」「寒い冬の夜、外の柔らかな雪明りが差す窓辺で」「灯りに使うお金もないが、頑張って勉強した日々」という絵を思い浮かべながら歌えれば、歌詞は忘れません。たとえ忘れたとしても、近い意味の言葉が浮かぶので、焦らずサラッとごまかすことは可能です。
第三に、和声と紐づけて覚えること。和声には色があります。楽しい色、苦しい色、悲しい色...たいていの曲は、歌詞の意味に見合った和声がつけられていますので、それを味わいながら歌う習慣を。楽器ができる人ならピアノやギターを弾きながら、できない人は伴奏をよく聞きながら歌うと発見があります。([E:#x266F]∂)
A.よく忘れるのなら、忘れるところの法則を見いだしてください。覚えにくいところもあれば、覚えやすくても忘れやすいところ、間違えやすいところもあります。最悪のケース、そのことばが出てこないときの代用語を用意しておくこともあってもよいでしょう。
途中を抜かしたり、間奏をまてないミスに比べたら、一ヵ所の歌詞のカバーくらいは、簡単なことと思ってください。いつも即興でやるくらいの気持ちなら、ポップスにおいては日頃のボキャブラリーを豊かにしておくことです。([E:#x266D]π)