A.例えば、どういうふうに、力を入れていくかを教える事は、熟達した技を体現できる人にしかできないですが、脱力論は、体現できない人でも言え、都合の良いものでもあると思います。脱力論は、大体にして脱力してはならない肝心な所も弛緩させてしまう為、その内に永遠に停滞のループにはまりこんでしまう危険性があります。緊張のノウハウより脱力のノウハウが多く言われている理由は、緊張のバランスの妙技を会得する事の難しさを物語っていると考えられます。無駄な力が抜けるとは、意思の力で抜くのではなく、必要な緊張が充分でバランスとれている時に結果的に生じる現象です。脱力しろ
という指導からは、何も得る事は無ないに等しいと思います。カルーソー以降の近代発声を喉声だと非難する人たちは、まず、近代発声の訓練途中で挫折した人たちか、脱力論に傾倒し、近代発声をやろうともしない人たちだと思います。脱力は結果であり、どのように自発的な力を使うかの方に意識を集中させることがもっとも大切なことであることを忘れないようにしましょう。
(♭∀)