発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q3693.よい呼吸について教えてください。

A.人が一番自然にできる呼吸はどんなものか考えたことがありますか?

それは寝息です。寝息はだれしも横隔膜を使って呼吸していますが、いざ歌うとなれば身体に力が入って、なかなか自然な呼吸ができないのは困ったものです。寝息は横隔膜が収縮し下へ下がる、横隔膜に隣接した肺はそれに引っ張られて空気を取込む、横隔膜の収縮が止むと横隔膜は元に戻るため上に上がり肺の空気も吐かれる仕組みになっています。従って寝息は「スーと吸って、ハァーと吐く」ことになりましょう。この寝息を歌に使えば最も自然なブレスで歌えるというわけです。「スーと吸って、ハァーと吐く」のでは歌のブレスが続かないと心配するむきもありましょうが、呼吸だけのとき声門は開いているのでハァーと吐いてしまいます、しかし歌う場合、声門は閉じて居ますから驚くほどブレスは長続きするのです。声帯に息を送って音声を生む、いわば車のエンジンにあたる部分がブレスです。大きな声を出そうとして息の量を増やしたり、よく響く声で歌おうとして息の圧力を強めたりするような人為的なブレスコントロールから脱却するのが、良い声を作る一番の基本であると心がけることが大切です。こう考えてくると素晴らしい音楽を歌うためには、ブレスがいかに自然な形のものであるかが重大な役割を担っているのが見えてきます。歌に適した呼吸法とは、胸郭の動きを制御する呼吸よりも、横隔膜の収縮による呼吸の自然な動きに任せた方がよいのはこのような理由からです。(♭∀)