A.子供の頃にあまり有酸素運動をしなかったり、日常的に、ほとんど有酸素運動をしないと、胸式呼吸がうまく発達しなかったり、衰えてしまうことがあるようです。それでも、ヴォイストレーニングなどで腹式呼吸の重要性を知らされないままならば、細々と胸式呼吸も活用されるはずなのですが。
最近また、腹式呼吸の活用による健康法なども、ちらほらと目にするようになりました。十数年サイクルで流行るものなのかもしれません。そのたびに目の敵にされたり、悪者扱いされるのが、胸式呼吸です。それほどに悪いものなら、なぜ肋骨は可動式になっているのでしょうか。
黄金のトランペットともてはやされたオペラ歌手マリオ・デル・モナコが活躍した時代には、多くの男声オペラ歌手が、胸を広げて胸囲の大きさを誇示するかのように、最高音域を出しています。彼らは腹式呼吸が苦手だったのでしょうか。舞台上で薄着の衣装を通して垣間見られる彼らのお腹は、決して細く貧弱なものではなく、贅肉のかたまり感も少ないもので、むしろ、とても活発に腹式呼吸で活用されている様子がうかがえます。つまり、胸式呼吸に偏っていたわけではなく、腹式呼吸に偏っていたのでもない、呼吸器官を、うまくフルに活用して、美声を紡ぎ出していたというところでしょう。(♭Ξ)