A.基本的な考え方、他との大きな違いは、声の一番、原点のところまで戻していることです。私は、いくつかの学校の設立や、トレーナーの指導にも呼ばれて行くことがあります。
ヴォーカルスクールでは生徒をみても何年いるのかよくわからない。歌をみても声をみてもわかりません。歌は20歳までにつく力の差が大きく、学校に1~2年行っても、そこで一番の人を追い越すということはなかなかできません。勘や音楽性に加えて、声を操る能力も必要です。
トレーニングで変わることはたくさんありますが、その人が生きてきた中で、特殊な経験としてよいトレーニングを積んできた人にはともかく、そうでない人にも劣るということであれば、そこまでの生き方の中での音や声の受け止め方と、その使い方のところからみていかなければいけません。
みんなゼロから始めると思いがちですが、声や歌の世界は、日常にそのままあります。生きている限り、息や声は使ってきています。他の学校に行って、その学校でうまくいかなかったからやるのではなく、そこでうまくいかなかった理由は何か、うまくいった人もいるではないかと、事実をきちんと見なければ解決もしないし、それまでの年月も無駄になりかねません。
歌い手や役者は、その人が生きてきた人生でいいことも悪いことも、その人の世界になります。偉い先生に10年20年ついていても、音一つとれない人もいます。特別なことはせず、すごく歌える人もいます。その人の中に入っているものは非常に大きいです。それに対して感度というアンテナをつけていくのです。