発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q3938.高音発声へのアプローチ法について(中低音があるレベルまでできているとして)(4)

A.男性の場合、中音から高音への移行をスムーズに行うためには、テノールはミ、ファ、#ファ、ソ辺りの音域、バリトンは#ド、レ、#レの音域の充実がとても重要です。この音域は声楽的な用語でパッサッジョといいます。この音域をスムーズに通るためにジラーレという勉強をしなければいけません。
ジラーレはとても難しいテクニックです。明るく開いた声でもっていっても高音は出ません。高い音が出たとしても喉を締め付けた叫び声か、薄い声になってしまいます。高く輝かしい音をアクートといいますがこれは本来「鋭い」といった意味です。
ジラーレは感じ方が人によって違うので活字にするのはとても難しいですが、口が開きすぎてはいけません、閉じ気味で訓練する必要があります。
アの母音よりもオ、イ、ウなどの母音の方がジラーレの訓練としては向いているでしょう。アの母音からオに変化させたり、オからウに変化させるのも効果的なメニュです。
女性は日本人の場合多くの人が声が軽いのでジラーレを訓練する必要がない方が多いのではないでしょうか。しかし欧米の女性歌手は正しくジラーレを行う方が多いです。
例えばモーツァルトの「フィガロの結婚」というオペラの第二幕に伯爵夫人という役が半音階でハイCを出す箇所があります。あの音域はジラーレができないとうまく歌えません。ハイCでPで歌うのが慣例になっていますし楽譜にもPと標記してあります。つまりアクートをPで歌う技術がないと伯爵夫人という役は歌えないのです。アクートがうまくでる=ジラーレがうまくいくと理解していただいてかまいません。
高音域を勉強しようとして高音域ばかりを訓練してもそれはあまり意味をなさないと思います。豊かな中音とパッサジョの音域の訓練なくして高音の開発はないと思ったほうがよいでしょう。(♭Σ)