Q.歌でなく、声の上達というのはあるのですか。
A.声楽家で言うのなら、ソルフェージュ、コンコーネ50(発声教本)、オペラの曲と、この3つを進めていくなかでも、基礎から応用の歌唱へいくと違っていくものです。年月とともに上達していくものです。オペラを歌えるようになると、その発声で統一されてしまうものでしょうから、そういうフレーズでの声をみることにしています。(ただし、オペラ、声楽の観点に囚われずに)
Q.レッスンにもってくる曲はどんな曲がよいのですか。
A.最初にうまく歌えている曲、次にまったくできない曲もよいでしょう。ステージなら、異なるタイプの曲を2曲以上、明るい、暗い、アップテンポ、スローなど。ヴォイトレ用に使うのなら、今のステージで歌わない曲を望みます。
Q.練習では、オフィシャルな声とプライベートな声、どちらを使うのですか。
A.人は役割によって、態度も話し方も声も変えるので、そういうことについて聞いていらしたのでしょうか。ここでは、もっているものすべてを使ってください。舞台はオフィシャルなところです。そこで使うのに会社での応対の声では弱いし、プライベートの声では、雑な気もします。
Q.表情のトレーニングなど必要なのですか。
A.私は、声をよくすることは、表情の動きを伴うので、トレーニングをしていたら不要と思っていますが、レッスン中では、お勧めすることもあります。一つは、日常、あまりに表情を使っていないため、顔の筋肉が固くなっている人、もう一つは、声楽などのプロセスで、ふしぜんに表情を固める人がいるためです。そこからのリリースです。毎日笑っていたら、それが一番よいのですから、本当は無理にでも笑って過ごしてくださいな。
Q.レッスンで発声がうまくつかめません。どうすればよいでしょうか。☆☆
A.何事もすぐにはできないものと思ってください。すぐにできるのならレッスンにこなくてもできます。間違えないというのなら一人でもできます。間違えているところ、できないことをレッスンに見せにくればよいのです。最初は、言われていることもわからず、どうしようもないことからスタートでよいのです。そのうち、わかることも出てきます。うまくできないのは当然のことです。
Q.発声など、レッスンでやっていることはわかるのですが、うまくいかないのです。
A.できないとわかることは、すごい進歩です。そこでわかろうとばかりすると、どんどんわかってもできない。わかったつもりになっているだけになります。できたことがわかったことですから、そこからわからないことができて、わかる。あるいは、できたのなら、わからなくてもよいのです。
Q.できているのに、トレーナーにダメと言われます。☆
A.トレーナーに「できた」「できている」と言われて、初めてわかるものもあるのです。頭でわかったつもりでわかるものと、できるものとは、多くのケースで異なっているのです。
自分でできたつもりのものが間違いであり、間違えたようなものでできた、というのが正しいことがよくあります。そこで、正しいものとは、今まで気づきもしなかったこういうものなのだという、新しい感覚の発見になるのです。
Q.ヴォイトレと歌のステージとの関係は、どういうものでしょうか。☆
A.トレーニングでできたもの、正しいものというものは、ステージでは間違いということもあります。ステージで出し、これまでにない新しい感覚、ときに間違えたと思ったものが、結果として、できていることもあります。できたときに、それをよしとするのです。
前向きにステージ感覚を身につけ、それをトレーニング感覚の上におくことです。レッスンもまた、その発見のためのものであります。常に新たな驚きとともに表現はやってくるのです。
Q.なぜ、レッスンに行くのでしょう。続けるのでしょう。
A.それは、多分にトレーナーの方が、今のあなたよりはあなたの声やその将来とそこまでのプロセス、可能性と限界について知っているからです。大してあなたのことを知らなくとも、あなたよりはあなたの声について正しく判断できるからです。それを学ぶだけでも価値があります。
Q.判断力をよくすることについてアドバイスをください。 A.自分がうまいとか、できるとか、他人からのアドバイスなどいらないという固定観念の方が、その人の可能性を妨げることが多いです。ときに、そういう人も来ますが、そのままではレッスンでも直らず、続かず、伸びずの第一候補です。いくらできているつもりであっても、それは、対人関係、人への表現において、みるべきだと思います。(♯)