Q.共鳴と母音との関係は。
A.母音は、舌の位置で口の中の空間を変え、フォルマントを変えて形成します。母音は、声としての楽器音といってもよいでしょう。吹奏楽器のように、特有の音色、長短、強弱、高低などを生じさせることができます。
「あー」と声を出し、口を縦に横にと、交互に開けてみてください。明るく、暗く、硬く、柔らかく、軽く、重くなど、いろいろな音色にすることができます。いくつか試してみてください。母音によっても、出しやすい音色が違いますね。「アーン」とNをつけると鼻に抜け、深く柔らかくなります。
Q.いろいろな音色を出してみるとは。
A.・あくび 「(あーあー)」
・大笑い「あははは」「いひひひ」
・号泣「エーン」
・喘ぐ「アーン」
・冷やかす「イエイ」
Q.調音と子音との関係は。
A.子音は、唇、歯(茎)、鼻、舌を使って、声や息の流れを妨げて生じさせます。こうして発音することを構音(調音)といいます。どの音もすべてもっともよい声でそろえるようにしてください。常に、音の高さや発音よりも、「よい声」にすることを優先してください(「悪い声」→「よい声」→「ベターな声に」)。今の「ベターな声」については、さらによくしていってください。(「ベターな声」→「ベストの声」)
Q.舌を使うトレーニングとは。
A.1.ランダ・ナンダ・ガヤダ
2.タテタケカケタ
3.タカラダタケダ
※どのトレーニングも、もっとも出しやすい音(できたら深い声、音の高さ、強さ、長さ)で行なってください。
Q.子音の発音を学びたい。
A.日本語の子音は母音につく(日本語の場合は原則として1子音+1母音)ので、柔軟かつすばやく出すことが求められます。母音がその共鳴で歌の流れをつくり出すのに対し、子音はそれを妨げかねないからです。あとにくる母音を生かすように注意してください。
K、T、Fなどは、声帯をふるわさずに大部分、のど、舌、唇によって発音されます(これを無声音といいます)。
L、M、N、R、Z、V、Wなどは、母音と同じく声帯の振動を伴います(これを有声音といいます)。
これは次にくる母音と分かれて聞こえないように、注意しなくてはなりません。MAがM・Aと2つの異なる音の高さで聞こえないようにします。とくに巻き舌のRなどでは、注意してください。
K 舌の中央を山型に軟口蓋につけ、息を止めてこれを離すことで発音します。「か(K)や、が(G)」は、舌根の奥で行なっているため、次にくる母音が不明瞭になりやすいです。
N 日本語の「ん」とは違います。歯茎の軟口蓋に舌の先がついて、瞬間的に鼻に抜けます。
V、F、W 下唇の裏と上の前歯で摩擦して発音します。
Z 歯の間ではなく、舌を歯の間で出します。
Q.ラのRとLとの違いは。
A.R 舌を薄く柔らかにして、舌の先端を振動させ巻き舌にします。声を発するのが、のど奥になります。
L 舌を柔らかく薄く扱い、舌の先端を軽く上の前歯の先方につけ、前にはずしながら発音します。
「ラ」 Lより少し縮まり後方につき、舌根がやや固くふくらみます。どちらかといえば「Da」に近いようです。
lalalaは「ラララ」と違って、あごは動きません。
Q.英語での発声から発音へのトレーニングとは。
A.日本語のアエイオウを、AEIOUとおきかえて、英語で説明します。ただし、英語のAは口内が狭くなりがちなので注意してください。
A……GARDEN(ガーデン) 口を大きくあけ、舌を平らにして明るく。薄っぺらな声にならないように
E……EVER(エバー) Iより口を大きく。多くの息を使う
I……CHEESE(チーズ) 唇がほどよく開き、明るく広く
O……FOR(フォー) 舌を平らにする
U……FOOL(フール) 唇をあまり前につき出さず、鼻音にもならないように気をつける
ついでにもう3つ、発音を学びましょう。
ユ( j)(ウムラート)……ウの口形でイを発音(英語になく、ドイツ語・フランス語)[※ウムラート・・・後続母音の影響による母音変異]
アー(ER)……HER、口を中くらいにあけて、やや唇をつき出す
ア(A)……HAT、大きな口で明るくはっきりと出す
Q.日本語の発音トレーニングは。
A.ア行 愛は、上を向く ガ行 ガキがグッとでカエルゲコー
カ行 柿食えば、けっこうな ザ行 ザジが地図を善三にざっくり
サ行 さしつ、そそられ、せすれば ダ行 ツチのコ出たのどこだ
タ行 たてつつ、たちつつ、ちょっとと バ行 ボビーのブーは、美人でべっぴん
ナ行 なに縫って、寝るの パ行 ペーパーとポプリでピーピー
ハ行 派兵され、被弾で訃報 ン行 新聞は先代の本屋さんから
マ行 豆も、むりにいみな ☆特殊音節 ※母音が無声化するときもある
ヤ行 やい、髪を結えよ 拗音 「ャ」 キャキュキョ シャシュショ
ラ行 ラッパの列と羅列 撥音 「ン」 先代 仙台 先頭
ワ行 わをいえずにうんと 促音 「ッ」 やっぱり さっぱり トロッキー
Q.早口ことばのトレーニングとは。
A.発音をはっきりとさせましょう。滑舌=アーティキュレーションをよくするのです。
<ア>あら、また、あかいはたがあがった、かった、かった、あかがかった。
<イ>いちり、にり、しちり、いちにちに、ぎりぎり、しちり、いった。
<ウ>歌うたいが歌うたいに来て歌うたえというが、歌うたいが歌うたうだけうたえ切れば、歌うたうけれども、歌うたいだけうたい切れないから歌うたわぬ。
<エ>蝦夷(えぞ)で暮すも一生、江戸で暮すも一生。
<オ>老いては負うた子に教えられ。
<カ>神田鍛冶町の角の乾物屋の勝栗(かちぐり)買ったが、固くて噛めない、返しに行ったら、勘兵衛のかみさんが帰ってきて、かんしゃく起して、かりかりかんだら、かりかり噛めた。
<キ>菊桐菊桐三菊桐(みきくきり)、合わせて菊桐六菊桐(むきくきり)
<ク>くりくり坊主が栗食って、くりくり舞をくりかえし、くるりと庫裡(くり)へくり込んだ。
<ケ>怪我負け、怪我勝ち、大怪我、小怪我。
<コ>小卵大卵(こたまごおおたまご)、大卵小卵。
<サ>笹原さん、佐々木さん、佐々三郎さん、三人早速あさって誘ってさしあげましょう。
<シ>信州信濃渋井村、新家(しんけ)の重(しげ)さんの尻にしらみが四匹(しひき)しがみついて死んだ。
<ス>住吉(すみよし)のすみにすずめが巣をくって、巣早すずめの巣立ちするらん。
<セ>浅草寺(せんそうじ)の千手観音(せんじゅかんのん)、専念千日千遍(せんじつせんぺん)拝んで、千束町(せんぞくちょう)で煎餅買って千食べた。
<ソ>そんじょそこらのそばかす小僧が、そちをそしって逃げたとしても、そちはそれほど、そっとこらえてそしらぬ顔とは感心だ。
<タ>この竹垣に竹立てかけたのは、竹たてかけたかったから、竹立てかけたのです。
<チ>茶たばこのんでたばこ茶のむ、茶たばこたばこ茶々たばこ、のむ。
<ツ>つるてんつるてんはぎわらてん、破れた前だれあててんてん、夏は寒天心太(ところてん)、島島弁天(とうとうべんてん)手をうちゃ合点、一天合中六天(いってんがっちゅうろくてん)、それで私のもとでこてん。
<テ>テレピン油(ゆ)を掌(てのひら)にたらして手と手でもんでおてんてんへつけて見ろ。
<ト>とてちてた、とてちて、とてちて、とてちてた、おっと踊った。とんつつ、とんつつ、ととんつつ、どんたく踊りをおどろうぞ。
<ナ>長持(ながもち)の上に、生米、生麦、生卵。なた豆七つぶ生米七つぶ、七つぶなた豆。七つぶ生米。
<ニ>二条の西の洞院(とういん)、西入人形屋(にしいるにんぎょうや)の二階で、鶏が二羽、西向いて逃げた。
<ヌ>盗人と濡衣担(ぬれぎぬにな)い、悩みぬぐえず、七日七晩(なぬかななばん)泣きぬれる。
<ネ>年々ふえる年祖捻出(ねんそねんしゅつ)、なんとかならぬか泣言(なきごと)ならべた。
<ノ>農商務(のうしょうむ)省特許局日本銀行国庫局。
<ハ>パイプの火の不始末から火花ふいて、本家分家を灰にした。
<ヒ>かえるひょこひょこ三(み)ひょこひょこ、四(よ)ひょこひょこ、五(ご)ひょこひょこ、六(む)ひょこひょこ、七ひょこひょこ、八ひょこひょこ、九ひょこひょこ、十ひょこひょこ。
<フ>武具馬具(ぶぐばぐ)、武具馬具、三武具馬具、合わせて武具馬具六武具馬具。
<ヘ>家(うち)の牛(べ)こはよい牛こ、隣の牛こもよい牛こ、向こうの牛こもよい牛こ、三つ合わせて三よい三牛こ。
<ホ>坊主の貧乏、非常にふびんと坊主と坊主の父母が、奉仕と募金。
<マ>青巻紙赤巻紙黄巻紙(あおまきがみあかまきがみきまきがみ)、黄巻紙赤巻紙青巻紙、長巻紙に赤巻紙。
<ミ>猫が拝(おが)みゃがる、犬が拝みゃがる、馬が拝みゃがる。
<ム>麦ごみ麦ごみ三麦ごみ、合わせて麦ごみ六麦ごみ。
<メ>ちょっと流し目したら、目くじら立てて怒られて、ひどい目に会った。
<モ>すももも桃ももう熟れたから、もう売れよう。
<ヤ>おやおや、八百屋さん、お綾(あや)は親とお湯屋(ゆや)よ。
<ユ>湯河原に遊びに行って夕月を眺めたら、愉快になった。
<ヨ>居合(いあい)の用意はよいな。用意はいいよ。よいよい。やあやあ、いよいよ居合をやるぞ。
<ラ>雷鳥は寒かろラリルレロ。
<リ>瓜(うり)売りが瓜売りに出て瓜売れず売り売り帰る瓜売りの声。
<ル>虎をとるなら、虎をとるより鳥をとり、鳥をおとりに虎をとれ。
<レ>冷蔵庫から、冷凍料理を出してこいと言ったら、冷蔵庫から冷凍料理を出さないで、冷蔵庫からビール出してラッパのみした。
<ロ>とろろ芋をとる苦労より、とろろ芋からとろっとするとろろ汁をとる苦労。
<ワ>わらわば笑え、わらわは、笑われるいわれはないわえ。
Q.滑舌のトレーニングを教えてください。
A.「外朗売り」の中ほどの部分です。
そりゃそりゃそらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。アワヤ咽(のど)、さたらな舌(した)に、カ牙(げ)サ歯音(しおん)、ハマの二つは唇(しん)の軽重(けいちょう)、開合(かいごう)さわやかに、あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろを、一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、盆(ぼん)豆(まめ)、盆(ぼん)米(ごめ)、盆(ぼん)ごぼう、摘(つみ)蓼(たで)、摘(つみ)豆(まめ)、つみ山椒(ざんしょう)、書写山(しょしゃざん)の杜(しゃ)僧正(そうじょう)、粉(こ)米(ごめ)の生がみ、粉米の生がみ、こん粉の子生(こなま)がみ、繻子(しゅす)ひじゅす、繻子、繻(しゅ)珍(ちん)、親も嘉(か)兵衛(へい)、子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、ふる栗(くり)の木の古切口(きりぐち)。雨合羽(あまがっぱ)か、番(ばん)合羽(がっぱ)か、貴様(きさま)のきゃはんも皮(かわ)脚(ぎゃ)絆(はん)、我等がきゃはんも皮(かわ)脚(ぎゃ)絆(はん)、しっかわ袴(ばかま)のしっぽころびを、三針(みはり)はりながにちょっと縫(ぬ)うて、ぬうてちょっととぶんだぜ、かわら撫子(なでしこ)、野(の)石竹(せきちく)。のら如来(にょらい)、のら如来(にょらい)、三(み)のら如来に六(む)のら如来。一寸先(ちょっとさき)のお小仏(こぼとけ)におけつまずきゃるな、細(ほそ)溝(どぶ)にどじょにょりょり。京のなま鱈(だら)祭良なま学(まな)鰹(がつお)、ちょっと四、五貫目、お茶立(だ)ちょ、茶立(だ)ちょ、ちゃっと立(た)ちょ、茶立(だ)ちょ、青竹(あおだけ)茶筅(ちゃせん)でお茶ちゃっと立ちゃ。
来るわ来るわ何が来る、高野(こうや)の山のおこけら小僧(こぞう)。狸(たぬき)百匹(ひゃっぴき)、箸百(はしひゃく)膳(ぜん)、天目(てんもく)百杯(ひゃっぱい)、棒(ぼう)八百本。武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、ぶぐ、ばぐ、三武具馬具、合せて武具、馬具、六武具馬具。菊、栗、きく、くり、三菊栗、合せて菊、栗、六菊栗。麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、合せてむぎ、ごみ、六むぎごみ。あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長薙刀ぞ。向こうの胡麻(ごま)がらは、荏(え)のごまがらか、真ごまがらか、あれこそほんの真胡麻殻(がら)。がらぴい、がらぴい風車(かざぐるま)、おきゃがれこぼし、おきゃがれ小法師(こぼし)、ゆんべもこぼして又こぼした。たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、たっぽたっぽ一丁だこ、落ちたら煮て食お、煮ても焼いても食われぬものは五徳(ごとく)、鉄(てつ)きゅう、かな熊(くま)童子(どうじ)に、石(いし)熊(くま)、石持(いしもち)、虎熊、虎きす、中にも東寺(とうじ)の羅生門(らしょうもん)には、茨木(いばらぎ)童子(どうじ)がうで栗(くり)五合つかんでおむしゃる、かの頼(らい)光こうのひざもと去らず。
鮒(ふな)、きんかん、椎茸(しいたけ)、定(さだ)めて後段(ごだん)な、そば切り、そうめん、うどんか、愚鈍(ぐどん)な小新(こしん)発地(ばち)。小棚(こだな)の、小下の、小桶(おけ)にこ味噌(みそ)が、こ有(あ)るぞ、小杓子(しゃくし)、こ持って、こすくって、こよこせ、おっと合点(がってん)だ、心得(こころえ)たんぼの川崎、神奈川(かながわ)、程ヶ谷(ほどがや)、戸塚は、走って行けば、やいと摺(す)りむく、三里ばかりか、藤沢(ふじさわ)、平塚(ひらつか)、大磯(おおいそ)がしや、小磯の宿(しゅく)を七つ起きして、早天(そうてん)早々(そうそう)、相州(そうしゅう)小田原とうちん香、隠(かく)れござらぬ貴賎(きせん)群衆(ぐんじゅ)の花のお江戸の花ういろう、あれあの花を見てお心をおやわらぎやという。産(うぶ)子、這(はう)子に恥(いた)るまで、この外郎(ういろう)の御評判(ごひょうばん)、御存じないとは申されまいまいつぶり、負(つの)出せ、棒(ぼう)出せ、ぼうぼうまゆに、臼(うす)、杵(きね)、すりばち、ばちばちぐわらぐわらと、羽目(はめ)を弛(はず)して今日(こんにち)お出(い)でのいずれも様(さま)に、上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っぱり、東方(とうほう)世界(せかい)の薬の元(もと)〆(じめ)、薬師(やくし)如来(にょらい)も照覧(しょうらん)あれと、ホホ敬(うやま)って、ういろうは、いらっしゃりませぬか。(♭)