発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. ヴォイトレのレッスンへのぞむ心構えを教えてください。

. 声楽のレッスンを数年以上、毎週コンスタントに受け、音大に入り卒業し、オペラなどの現場で歌うようになった人間には、毎日の自主トレでの、次回のレッスンへの下準備は、当然のことでした。

声を使う分野でのプロを目指している人には、そのくらいの心構えで、レッスンに臨んで欲しいと思います。

しかし、趣味の分野で声を伸ばしたい、声をもう少し楽に出せるようになりたいなど、それほど差し迫った目的ではない人は、それぞれの必要に応じて、気楽に取り組んでいただくのも、がんばり過ぎて辛くなってしまうよりは、細く長く続けていただいた人が、いい結果も実っていくと思います。中には、「私は自主トレは一切できません」、と明言される人もいて、それで高望みをされては困りますが、それなりの結果でよしと割り切られるのも、忙しいお仕事の合間を縫って、レッスンを受ける姿勢としては、ありだと思います。せっかく始めたヴォイトレは、続ければ続けるほど、さまざまな部分が見えてくるので、短期決戦で、理解したつもりで卒業してしまうよりも、じっくりと体も変化させながら、長く取り組むことをお勧めします。([E:#x266D]Ξ)

 

.基本的には気軽にレッスンにいらしてください。気張らずにいらしていただいていいと思います。重要なのはレッスンがある状態が日常化することです。声の場合、自己流は必ず声が間違った方向へ向かいます。一日1㎜のずれが30日後には3㎝になります。小さなスタジオで気持ちよくだせた声が、大きなステージでは突然苦しくなることがあります。

技術の修正と向上がレッスンだと思います。そのためには毎日続けられることが重要ですから、まずは難しく考えずにレッスンに通う習慣をつけることが大切です。

プロを目指す、オーディションを受けるなど、「目的、目標」が明確にあるのならば、レッスン開始時間の前に入り準備を整えて、第一声で自分の納得いくパフォーマンスをトレーナーに聴かせることが重要だと思います。それを聴いた上でトレーナーからアドバイスがでます。

トレーナー側も何が問題なのか、うまくいっていない点、改善の方法などを的確に伝える努力が必要ですが、生徒側もアドバイス、ダメだしを受け入れられることが重要です。褒められるよりもアドバイスやダメ出しの中に必要なことがたくさんあると思います。

トレーナー側、生徒側のバランスがうまくいくとレッスンはとても効果的に有効な時間になります。

トレーナーが褒めたとしても、自分なりに疑問があることは尋ねてよいと思います。レッスン時間を有効に使ってください。([E:#x266D]Σ)

 

.「心構え」のひとつとして、まずはトレーナーに身を任せるつもりでぜひ望んでください。

自分の声を本当の意味で客観的に捉えることは、誰にとってもできないことです。(録音の声はオンタイムで聞く声とは違うものです。)

それまでの思い込みや、無意識にやっていた癖など、長所も含めてその人なりの新たな発見が必ずあります。それらを知ることは声や声の出し方をより改善するために大いに役立ちます。

例えば、もしレッスンの進め方や不慣れなトレーニング方法などに対して心がブロックされることがあっても、すぐ自己判断せずに(自己流に行わずに)、一旦は身を任せてしっかりと取り組んでみてください。自己判断で中途半端な状態になるより、無理と感じたりよくわからないと感じる中でも思い切ってしっかり取り組んでみたその先にこそ新しい体感を得る自分があります。([E:#x266F]α)

 

.声というものは、生まれてから今日まで無意識に扱っていたものでありますし、日常あたりまえのように使っているものです。そのため、勉強や体のトレーニングよりも非常に厄介で時間のかかる分野です。

つまり、ヴォイトレは一朝一夕では解決しない長い道のりであるということが、心構えの大前提として持っておくべきことだと思います。

一度や二度通ったくらいでガラっと変わるようなヴォイトレは、この世には存在しません。自己否定と再構築の繰り返しです。それくらい徹底してやらなければ、根本的な解決につながらないし、中途半端な知識とテクニックで終わってしまうと思います。

その反面、覚悟を決めて、時間をかけて臨めば、時間はかかったとしてもわかりやすく変化をしていく分野でもあると思います。

必要なことは、徹底的に変えていこうと思う強い気持ちと、途中であきらめない強い覚悟ではないでしょうか。継続は力なりです。変えていこうという強い気持ちと、絶えず努力していく忍耐力が大事だと思います。最初はわからないのがあたりまえです。途中であきらめずに続けてみてください。([E:#x266D]Я)

 

.ある程度ウォームアップをされてからレッスンにいらっしゃるとよいと思います。歩いて少し血流をよくし、あくびなどで喉をよくひらき、体もストレッチして準備します。可能であれば声を少しだして、声帯も振動させておいてください。ハミングやリップロールなど小さい音でかまいません。レッスンでいきなり声を出すより、声帯を守れると思います。

レッスン中は、なるべく感覚を研ぎ澄ませていただきたいです。声のことは言葉で説明しきれないことが多々あります。トレーナーの口の開け方や体の使い方、ブレスの仕方、体のどこが伸びるか、膨らむか、ブレス以前の体はどうなるか、など、鏡をみているかのように真似していくと、何かつかめることもあるかもしれません。

言葉尻だけをとらえるようでは、間違ったとらえ方をしかねません。言葉だけでは説明しきれないジャンルだということを踏まえて、言語をつかさどる左脳だけでなく感覚をつかさどる右脳もつかってみてください。

自宅で復習する際は、録音しておいたレッスンを30分そのままなぞるということを一度やっていただきたいです。ノートなどにやった項目をリストアップしていくと、ご自身の自主トレメニューノートができあがると思います。([E:#x266F]β)

 

.ご自分が声に向き合いたいと思った理由を明確にして来てください。

高い声を出したい、大きな声を出したい、自由に歌いたいなどの理由のもう一段踏み込んだところまで考えてみてください。

高い声、大きな声を出したいのはどうしてなのか、今自由に歌えないのはどうしてなのか、というところまで考えてみる必要があります。

あるべき声に導くのはトレーナーの仕事ではありますが、最終的に気づき声を育てていくのは自分にしかできないことです。([E:#x266F]ё)

 

.まず、何のためにヴォイトレを始めたかを再確認しましょう。歌がそんなにうまくなくても有名なヴォーカリストになれるこの時代に、あなたは何のためにヴォイトレを始めたのですか。

この機会に、あらためて紙に書きだしてもよいかもしれません。これは誰にも見せなくて構いません。いろいろなきっかけがあると思います。

「大きな声で歌えるようになりたいから」「バンドの仲間に強制された」「健康のため」「ストレス発散のため」などなど。

その原点を確認した後で、もっともっと、大きい夢をもちましょう。世界一、歌がうまくなりましょう。有名になりましょう。お金持ちになりましょう。夢は大きすぎるくらいでちょうどよいのです。少し努力したら叶いそうな夢は、人を成長させてくれません。一度限りの人生ですから、大きい望みをもって、頑張っていきましょう。

その上で具体的なアドバイスを一つ。「レッスンを休まない」ことです。上達は「足を運ぶこと」によって起こります。まったく自主トレできていなくても、多少体調が悪くても、気分が乗らなくても、スランプでも、体をレッスンに運んでください。

トレーナーに会うだけでも意味があります。私も、コンディションが悪くても、練習できてなくても、体さえ空いていれば尊敬する先生のレッスンを受けに行きます。「俺に会いに来れば上達するわけじゃないぞ!」と笑いながら怒られますが、私は行かないより行ったほうがいい、と考えています。人と人が会うところから、何かが生まれるからです。([E:#x266D]∴)

 

.何もしなくてもすぐに声が出る人もいれば、しっかりウォーミングアップしないとまともに声が出ない人もいます。特に自分は後者だという人は、レッスンにいらっしゃる前に声を出してくることをお勧めします。終わるころにやっとエンジンが掛かってきた、というのはもったいない話です。

とはいえ、声を出すのが怖い人や、音声障害の人、そこまで行かなくても第一声がうまく出ない、という人は、自主トレのやり方がよくない可能性がありますので、あえて声を出さず、まっさらな状態でレッスンを受けに来てください。練習の仕方を一緒に勉強しましょう。

ヨーロッパの音楽大学や歌劇場では、毎日レッスンがあり、生徒が自主練をする必要がないそうです。間違った声を出す暇すらないということです。

日本はそうではないので、自主練が必要です。毎日10分でいいので、いい声が出ている状態を体に覚えさせてください。日にちが空けば空くほど、脳の記憶も筋肉の記憶もあいまいになります。

あるレベルに達した人は、ヴォイトレには軌道修正に来る、とお考えください。推進力は自分で毎日重ねる練習でしか得られません。([E:#x266F]∂)