Ａ. 簡単にいうと、胸の周りに吸気を入れて、肩や胸が盛り上がると、胸式呼吸といわれます。手をウエストの両わきへあてるのは、チェックですから、いつもはやらなくてよいです。そのとき、肩、胸が上がったり、力が入ったりしてはいけません。そうなる人は、胸を心もち、あげておきましょう。お腹の周り全体が外側へふくらむのが感じられますか。
最初はわかりにくいので、上体を前方へ倒したり、座ったり、寝ころんだりして、息と身体（お腹）との関係をつかむとよいでしょう。
実際の呼吸は、腹式と胸式が組み合わされ、どちらかに切り替えはできません。しかし、呼吸としては、徐々に、お腹中心にしていくのです。
特に日本人の女性の場合は、胸式に頼りやすいようです。スポーツや激しい運動によって鍛えていくのも、一つの手段です。エアロビクス、ジョギング、水泳、気功、ヨガなどを取り入れれば、より成果が上がります。
どんな歌に対しても、しっかりとした声が出るように思い通りに息をコントロールできるようになるためには、眠っているときの腹式呼吸とは、ケタ違いに高度な扱いが必要です。これは時間をかけて毎日休まずコツコツとトレーニングをして身につけていくしかありません。
腹式呼吸だけでは声は出ません。腹式呼吸は出ている声を扱うための方法にすぎません。しかも、腹式呼吸は、誰でもすでに身についているのです。私たちはふだん、あるいは眠っているときに、無意識のうちに腹式呼吸を行っています。ですから、発声に伴って、腹式呼吸が無意識的にできるようになる必要があるということで、意識的にトレーニングするのです。
つまり、腹式呼吸は、それ自体がマスターとか、完成という段階があるのではなく、使うことへ対応できる程度問題です。役者や歌手でも必要度はそれぞれに違うのです。緊張してしまうなどというのも、この腹式呼吸でかなり改善されます。（♭π）
Ａ. 一番大切なのは、お腹を膨らませることです。お腹が膨らませられれば、少なくとも横隔膜には力が入れられるということです。息を吐きながら、お腹が膨らんでしまう人もいますが、息を吸うことと、お腹を膨らませることを、無理にリンクさせようとせずに、息を吸うときは、同時にお腹も膨らませるように、少しずつ練習していきましょう。初めはなかなかうまくいかないかもしれませんが、根気よく続けることが大切です。
スポーツなどを経験している人は、どうしても胸式呼吸が発達します。それ自体は、健康のためにもとてもよいことです。アマチュアで歌や合唱などに取り組んでいる人の中には、往々にして、腹式呼吸ばかり発達して、胸式呼吸が退化しかけている人も、ときどき見受けられます。ある程度よい声は出るのですが、胸式呼吸が全く使えないために、伸び悩んでいる場合が少なくありません。あくまでも、腹式呼吸がメインですが、胸式呼吸もある程度活かしながら、呼吸全体として、のびのびと呼吸のコントロールができることが、よりよい発声への道になります。腹式呼吸が充分にできているのに、お腹から思う存分に声が出せない人は、呼吸とは関係なくしっかりお腹を膨らませられるように、トレーニングしていきましょう。（♭Ξ）
Ａ. 呼吸は歌うときの姿勢に大きく関係します。たとえば上体が後ろに反っている・顎が上がっている・顔が前に出ている、といった場合は息が吸いにくい体勢なので呼吸が浅くなります。そして頑張って吸おうとすることで呼吸の度に胸や肩が上がる動作も出てきます。
まずは鏡を見て歌っているときの姿勢をチェックしてみてください。今の自分の状態を知ることはとても大切であり、改善への第一歩です。姿勢の癖を確認したら、今度は壁に背面をつけた状態で歌ってみましょう。まず壁に背面を向けて真っすぐ立ち、少しずつ壁に近づいてお尻や背面の一部、頭が壁についたら止まります。もし頭がつかない場合は、頭と壁の間にタオルを挟んでください。この状態で歌うと、いつもの姿勢の癖が出せなくなることで本来の身体の働きが一気に発動しやすくなります。息が取り込みやすくなり、自ずと身体の働きも感じられてきます。身体の働きが増えることはそのまま声の出しやすさにもつながっていきます。この方法はほんの一例ですが、腹式呼吸だけに捕らわれることなく、ご自身の身体に向き合い、楽器そのものである身体をしっかりと使っていくことに尽きます。
（♯α）
Ａ. おそらく、浅い呼吸になっていることからそのような指摘を受けたのではないかと思います。日常生活においては現状で過不足なかったとしても、ヴォイストレーニングという観点ではポテンシャルを発揮する状態に至っていないのでしょう。呼吸についてはいろいろな見解だったり、人それぞれのやり方があり、合うやり方も合わないやり方もあると思いますので、自分自身が声が出しやすくなる方法を取り入れればよいと思います。
誤解の生じやすい部分としては、「腹式呼吸＝お腹に空気を入れる」という認識です。人間の呼吸は「肺に空気を取り入れる」ということです。日常の生活では使われていないような肺の深い部分も活用できるようにするということが大切です。
取り入れるところまではできたとしても、膨らませた風船の口を閉じなかったときのように身体が萎むような状態ではすぐに苦しくなるので、「支える」という技術が必要になってきます。これらを総合的に機能させられるようにすることが、「腹式呼吸」ということにつながっていくと思います。ただし、人それぞれ異なりますので、自分の感覚だけに頼らず、トレーナーの指導のもとで理解することをお勧めします。（♭Я）
Ａ. 腹式呼吸といっても、いざやろうとするとなかなか意識しづらいと思います。そもそも腹式呼吸は、寝ているときは誰でもできています。リラックスできているからでしょうね。そしていざそれを歌でやろうとすると、意識しすぎるあまりに、肩に力が入ったり身体の脱力ができず深い呼吸ができなくなるのかもしれません。
まず、床に寝てみてください。おへその上に少し分厚い本を置いて、楽に呼吸してみてください。本が上下しますか。次に本の上下をみながら「あー」と声をロングトーンで出してみてください。
感覚をつかんだら今度は椅子に座って、前屈みになってみてください。上半身の筋肉が緩んだ状態ですから、腹式呼吸が意識しやすいかと思います。前屈みで深い呼吸ができたら、少しずつ背中をまっすぐにしてみましょう。このように段階を経て、リラックスしたまま声を出すことに慣れていけば腹式呼吸も身についていくかと思います。喉が身体の上の方についているから、ついつい声も身体の上部から出すイメージがあるかと思いますが、おへその下に口がついていると思って、声🟰お腹の底と意識づけできるようにしてみましょう。（♯β）
Ａ. 現在、胸式呼吸であり、腹式呼吸を完全に身につけたいということですが、はじめに確認したいのは、完全な胸式呼吸も完全な腹式呼吸もないということです。人には肺がついているので呼吸は肺を使って行います。そういう意味ではすべての人が100パーセント胸式呼吸です。その上で、横隔膜を使う比重が比較的多い場合を腹式呼吸というようです。しかし厳密に区別できるものではありません。
本当は、腹式呼吸を「身につける」という言葉がおかしいです。赤ちゃんのときはみんな腹式呼吸です。お腹を動かして息をし、全力で泣きます。歳をとるにつれて、「静かにしなさい」といわれたり、ストレスだったりで息が浅くなっていくのです。だから腹式呼吸を「思い出す」という意識が大切です。昔、できていたことをもう一度できるようにするのです。
さて、このような質問をしてくる方は、たいてい息の力そのものが弱いことが多いです。胸とかお腹とか関係なく、全力で息を使う練習をしましょう。「ふー」と思いっきり吹いてみましょう。もう一度「ふー」と思いっきり吸ってみましょう。目に見えるトレーニングとして風船を一息で膨らませる練習も効果的です。
なお、胸式呼吸が悪いわけではありません。私のクラスでは胸式呼吸（肺の回りの筋肉）の練習もさせています。
（♭∴）
Ａ. まず理解すべきは、胸式呼吸と腹式呼吸の間に明確な境界線は引けないということです。これは割合の問題で、呼吸時に主に胸郭が動くのが胸式呼吸、主に横隔膜が動くのが腹式呼吸です。
「主に」と言ったのは、それ以外の部分も稼働しているからです。胸郭3割、横隔膜7割といったふうに両方が動いています。どちらかがお休みしているわけではありません。
睡眠時以外の安静時におこなう呼吸は胸の割合が高くなります。激しい運動をした後ではお腹の割合が高くなります。つまり、活動量が少ないときには胸郭の動きで充分に酸素と二酸化炭素の置換が可能で、活動量が増大すると横隔膜の大きな動きなしには酸素は賄えないということです。
発声には腹式呼吸が有利です。そしていまいちよくわからない腹式呼吸を理解するには、激しい運動をしてみて、自分のお腹の動きを観察するのが一番わかりやすいです。その動きを発声時に再現してみればいいのです。
人間は睡眠時に自然と腹式呼吸になります。仰向けになってリラックスしたときの呼吸を研究するのもいいでしょう。（♯∂）
