歌の勉強やヴォイストレーニングをしたいという人の大半が、高い声を出すことを目指しているようです。J-POPS、欧米のロックなどの曲のつくりも、相当高い声まで使っているために、高い声が出せることが歌をうまく歌うための絶対条件、プロの条件だと考えている人が少なくありません。何よりも届くかどうかのチェックが簡単だから、挑戦しやすいのでしょう。トレーナーの教育欲がそれに拍車をかけているように思います。
単に高い声を出すだけでしたら、さほどむずかしいことはありません。しかし、それは歌を歌うときになんのメリットにもなっていないことが多いのです。実際は1オクターブも聞くにたえない声の人ばかりだからです。それどころか、喉を痛める原因をつくってしまいかねません。歌を本当に聞かせたいならば、うまく出せていない高い音にとらわれすぎないことです。
個性を主張するのには、自分が最も歌いやすい域で歌うべきでしょう。歌に自分を合わせるのではなく、自分に歌を合わせるのです。
まずは高音以外がしっかりと歌えているかどうかをチェックしてください。本当に歌のうまい人は低音域や中音域部も十分な表現力でもっていけます。抑揚がない歌、高音域に達しない歌でも、しっかりと歌えているからこそ、次にサビ(多くは高音)を期待される流れをつくっていけるのです。そうなれば、サビを歌い、それでそのフレーズを厳しくチェックすれば、高音発声も結果オーライ。そこでまず学ぶことです。