日本人のヴォーカルはどうしても頑張りが多いのです。さらに、日本では人情ものとか、不幸な生い立ちとか、感動話とか、歌に必要のないことが入りすぎる。私は歌一曲、その中の声だけで、判断したい。トレーニングだから、そういうことでみます。
でも他のものがバックグラウンドとしてあるのは、確かです。それは人間性がいいとか教養のある人とか、そういうことよりも何を実績として積んできたかということです。それに対して、呼吸や滑舌とか、声量とか、言葉やリズムというのは、楽器を弾くための技術までも必要ありません。日常の中にそのことに対して神経をきちんと使っていれば、ある程度はできるレベルですね。楽器というのは技術が絶対に必要なのです。外にあるから、自分が手を動かすようには動かない。ピアノを弾くのでも、体と常に結びつけていなければいけない。ところが声や歌はそこまでではなくとも、小さい頃から扱っていて、無意識に相手と会話をして、相手の声を受け止めている。歌わなくても感動させることはできるわけです。そこを間違えてはいけません。