A.曲の冒頭に、Moderato cantabile(中庸の速さで歌うように美しく)と記されていますが、現代の私たちの感覚では、少し違和感を覚える部分が、何カ所も出てきます。その部分を、美しく歌えるように練習することが、この曲の狙いです。
最初の二小節は、二分音符が二つ続いた後に、複付点の4分音符と16分音符が現れます。スラーもついているので、なめらかにレガートに歌うなら、複付点ではなく、付点四分音符と8分音符の組み合わせの方が、しっくりときれいになめらかに歌えます。そこをあえて16分音符にしているところが、難しいところです。支えをうまく使って処理する練習が必要です。
三連符が多用され、伴奏も三連符なので、随所に出てくる16分音符が、三連符にならないように、気をつけましょう。7小節目からのフレーズの終わりは、4分音符よりも長く伸ばしたくなりますが、きれいに4分音符で終わらせましょう。
19小節目のスラーは、細かくて大変です。20小節目以降のアルペジオは、音を外さないように、繰り返し練習しましょう。スラーがついているいる部分と、ついていない部分が、不規則に出てきます。しっかり歌いわけましょう。([E:#x266D]Ξ)
A.複付点と三連符が初めて出てきます。これまでのリズムと違いますが始めのうちはあまりハッキリとリズムを出しすぎないことがポイントです。このリズムを正確に出そうとすると喉でリズムをとりやすいからです。
冒頭にもcantabile(歌うように)とありますのでリズムを気にしつつもあくまでも音楽を大事にしてください。
1小節の#ファの音を正確にとりましょう。この音程が低いとその後もあまり音程が定まらなくなることが多いです。
3小節3拍のド、4小節3拍のファは響きが落ちやすいので音量を出しすぎず高い音と同じポジションで歌いましょう。
6小節の細かいリズムは全部をハッキリ歌おうとすると息の流れが悪くなるので全ての拍の最初の音に重みをかけてあげると歌いやすくなります。
9小節~16小節までは臨時記号が多くなっていますのでそれぞれ歌いわけれるように正しく歌ってください。
15小節は次のフェルマータに向かって多少rit(ゆっくり)になってもかまいません。
16小節の半音階は響きが落ちやすいのでしっかりと支えて下さい。
19小節から24小節までは音の跳躍が激しいので一定のポジションは響きで歌えるよう何度も練習しましょう。([E:#x266D]Σ)
A.練習曲ではありますが、cantabile(表情豊かに、なめらかに)とありますので、それを存分に表現して歌いましょう。6番までと違う点は、複付点音符や3連符という新しいリズムが入ったことです。それにより、ひとフレーズ内の音の数が増えたこと、音の進行が速くなったこと、が特徴としてあげられます。
6~7小節にまたがるフレーズは、この二つの特徴がどちらも入っています。3連符が続く箇所は、音が走らずに滑らずにかと言って重々しくならないよう、レガートで声をつなぎたいです。そしてフレーズ末尾に複付点4分音符がありますが、喉で押さずに、お腹の支えでリズムを捉えましょう。
19小節の3,4段目のようにたった2拍で1オクターヴ上行し、その後3拍で1オクターブ下行する箇所があります。ポジションがあちこちに行かないよう、また音程を喉でアタックしないよう、息がひとつのラインとして歌える状態を求めてください。([E:#x266F]α)
A.楽譜上は比較的シンプルに見えますが、テクニックとしてはそれなりの難易度を感じます。全体を通して音符の長さ、拍感は正確に出したいところです。また音の入りをずり上げずり下げなどなく、正確に正しい音程からスタートできることを心掛けたいです。
しかし、細かい音符などで声を頑張りすぎないことや音を必要以上に突きすぎないことに気をつけましょうしっかり鳴る声を大事にしつつ、声の強さだけに頼ったような過度なリズム表現は避けましょう。
二分音符や全音符の部分には、クレッシェンドとデクレッシェンドが書かれています。このダイナミクスを忠実に表現できるように心がけましょう。この部分は小手先の表現ではカバーしきれないので、体と声がしっかりリンクされていることが必要になります。ここは大変ですが、自分の声のコントロールを緻密にしていくのに役立つよい課題です。
最初の部分に強弱記号は書かれていませんが、このクレッシェンドやデクレッシェンドを両立できるレベルのダイナミクスを意識するとよいと思います。部分的に音の起伏が激しいところが出てきますが、声のポジションを変えないことも大事な要素だと思います。楽譜に書かれている指示を正確に演奏することを心掛けましょう。
([E:#x266D]Я)
A.3度、4度、5度の跳躍が多いためいい練習になると思います。ピアノの右手が3連符の刻みになっているので、3連符のリズムに乗って歌うと歌いやすいです。上級者は3連符と十六分音符がずれるように歌えると譜面をしっかり読めているということになります。
全体的な構成としては、最初の8小節がFdurで続き、Cdurで半終止します。次の8小節で短調の様子を呈しながらやはりFdurを行ったり来たりしてふたたびCdurで半終止します。最後の8小節で3連符の3度の連なり(分散和音のような形)でコーダに向かいます。
細かく見ると、2小節ずつの対話のようになっているところが多々出てきます。フレーズ感を持って歌いましょう。たとえば最初の1~2小節で問いかけ、3~4小節で解決する、9~10小節で問題提起する、11~12小節でその問題を受け取る、13~14で同じフレーズがバリエーションになる、15~16小節で解決し半終止形でフェルマータするといった具合にです。([E:#x266F]β)
A.符点のリズムが出てきます。符点のリズムを勘違いしている方が(専門家を含め)多いので、そのことについて述べます。符点は一拍を3対1にわけるものでは「ありません」!
モーツァルトのお父さん(レオポルト・モーツァルト)の本「ヴァイオリン奏法」に、符点はテンポが遅い場合は複符点のように演奏するように(つまり7対1で後の音が短かめになる) 、と書かれています。もっと古くバッハの時代から、符点は3連符と一緒に演奏する場合は3連符に合わせる(つまり2対1で後の音が長めになる) という規則があり、この規則は現在でも有効です。結論からいうとこの曲は符点は3連符で通して演奏してよさそうです。
実際に頭からこの曲を見ていきましょう。1小節目3拍目からすでに一時的な転調があり、かなりショッキングです。2フレーズ目にあたる5小節目の3拍目も同様です。歌は伴奏よりも先にそのことを察知して、1小節のはじめのファの音を次の[E:#x266F]までかなり持っていくイメージで。
5小節目で歌にできることはなさそうに見えますが、伴奏の転調を誘って上げるためクレッシェンドを早めにかけて歌い込んで下さい(実際にクレッシェンド位置が前目に書かれていますね)。カンタービレ(歌うように)は、クレッシェンドやデクレッシェンドを自由にたくさんかけて下さいという意味に取るとよいことが多いです。
([E:#x266D]∴)
A.まず、半音階の進行を正しい音程で滑らかに歌うことです。今までの曲と違って、しばしば臨時記号が現れます。ほとんどが経過音=大事な和音に至る途中の寄り道のような音です。そんなに身構えずに通り過ぎればよいのです。
寄り道というのは人生も音楽も豊かにしてくれる要素です。よき寄り道をするための具体的な方策ですが、頑張ってその音を強調したりしないこと、伴奏の和声をよく聞くこと、前後の音と段差を作らず滑らかに移行する(息の流れを止めない)ことです。そうすればフレーズ全体が自然にまとまります。
次に、付点と三連符の歌いわけに留意しましょう。付点は3:1、三連符は1:1:1です。伴奏はずっと三連符ですので、2小節目の2拍目裏は歌と伴奏がずれるのが正解です。対して、3小節目や6小節目の、タイで前の音と繋がった三連符は遅れがちですので、伴奏ときっちり合わせるように気をつけましょう。([E:#x266F]∂)